第55期 #2
夢を見た。
只ただ白い空間に取り残された、私、が、いた。
なぜかは判らないけれど、その夢を見ている最中、私はとても懐かしいような、心地の良い気持ちになった。けれども目覚めると隣には自分を買った醜い中年の男がひとり、いた。その男に心を売り渡した自身も同様に醜い。私はそっとベッドから抜け出すとバスルームへと足を向ける。シャワーの蛇口を捻ると、生温い水が私の肌に当たって足許へと滑り落ちていった。水は排水溝へと導かれ、其処で渦を巻いて消えた。いつかは私の中の白も、渦を巻いて何処かへ消えてしまうのだろうか。虚しさに呑み込まれ、汚れ、穢れ。背筋に悪寒が走ったので、シャワーの温度を高くした。
バスルームから戻ってきても、男は眠っていた。男の荷物の中から財布を探すと、札を適当に何枚か抜き取った。これが、自身の値段。そう考えるのが酷く虚しかったから、何枚かは数えなかった。