第53期 #25
さざなんでいる水面に、触れるか触れないぎりぎりのところをウミドリたちが渡っていく。圧巻のプリズムだ。浜辺は好きじゃないが鳥は好きだ。太陽は圧倒的な存在感を水平線の彼方に半分だけ顔をのぞかせて、はにかんでいるようにも見える。自然と笑みがこぼれる4:30am。
全てが自然界の恩恵を受けているのだ。
至福の砂塵は波とぶつかり合い融合するかのように海面に溶け込む。波打ち際では、彼女がいったりきたりの反復運動を繰り返しながら黄色い声。
僕は都会という独立国家の機密地域で、毎日あたふたと何故あんなに頑張れたのだろうか。僕が選んだリタイアは決してマイナスシンドロームではない。
革命的な朝を迎えた僕は彼女の横顔を見ながらそんな思いにかられていた。『一瞬の美学』。さっきから聞こえている言葉だ。海からのメッセージかもしれない。
「お腹すかない?」
気が付くと目の前に来た彼女が笑顔で聞いてくる。その顔を見てまたホッとして、これから先のことはもう少し先になってから考えても悪くないと思った。