第53期 #18

クロッカス

 突然、クロッカスの球根が大きな音を立てて破裂した。

 窓側前後席の女子が手紙をやりとりしていて、前の席の女子がいきなり手紙をクシャっと掴んで教室後方に投げた。上手い具合に観察用のクロッカスの球根にぶつかって、一瞬揺れた後に破裂したのだった。

 その光景をみていたのは僕だけで、あっという間の出来事だったから授業はすぐ再開した。
 僕はそのことを提出する「先生あのね」のノートに書き、大人の意見を待った。


 翌日返却されたノートには、「クロッカスの爆発した時の擬音語の使い方が上手ですね」と書いてあったので、僕はあきらめて新しいクロッカスを買ったがランドセルの中でまた破裂した。



Copyright © 2007 与一 / 編集: 短編