第53期 #10
少年は母子家庭であった。
ある日友達が新品の自転車を持っているのを見て欲しくなった。
「母さん、自転車欲しいよ」
少年は母に必死でねだった。
「お金がないから買えないよ」
母は残念そうに言った。
少年はしばらく駄々をこねていた。
そこへ友人が遊びに行こうと誘いに来る。
少年はらちが明かないので遊びに行くことにした。
数日後友人から、何かを放り込むと、正反対のものが現れる噴水の噂を聞く。
学校の向かいの公園にあるのと事。
但し、夜中に一人でやらなければいけないのだそうだ。
「ゴミ捨て場の自転車をほおりこんだら新品になるだろう」
少年は夜中にぼろ自転車を盗み、いそいそと噴水前に向かった。
突然猫が飛び出してきた。
少年はあわてて急ブレーキを掛けた。
ところが片方の前輪のブレーキが壊れていた。
少年はウイリーの体勢で噴水に飛び込んでしまう。
しかもタイヤがはまってびくとも動かない。
少年は諦めて家に帰っていった。
翌朝学校の校門前に黒山の人だかりが出来ていた
噴水の真ん中に新品の自転車が逆立ちしていたのだ。