第51期 #7

アキトとユキコ

 アキトとユキコはデート中に謎の宇宙人に誘拐されどことも知れぬ宇宙を飛翔する飛行体の内部に監禁されていた。窓のない内壁に柔らかいクッションの張られた部屋には、自動的にゼリー状の食料が投入された。
 宇宙人はなぜかアキトだけを定期的に呼び出し、別室で拷問した。アキトが帰ってくるたびユキコは拷問の様子を聞いたが、アキトはただ疲れたと答えるだけだった。肉体的な暴行の様子はないようだった。
「宇宙人はどんな姿をしているの?」
「わからないんだ。真暗でところどころ星のように点滅している。ひんやりとした柔らかなたくさんの触手がぼくを撫で回すんだ」
 他にすることがないのでアキトとユキコはセックスを繰り返していたが、アキトは次第にセックスを嫌がるようになった。
「アキト、拷問がひどいのね。それで気力がなくなってしまったのね」
「ごめん、白状するよ。実は拷問じゃない。もの凄く気持ちいいセックスなんだ。君とより何百倍もね。ああ、次に呼び出されるのが待ち遠しい」
 ユキコはなぜアキトだけ呼び出されるのかと何度も尋ねた。時には大声を上げてアキトを叩いた。アキトは少しずつ宇宙人と意思疎通できるようになってきたようだった。
「ユキコも呼び出してもらえるよう説得してみるよ」とアキトは約束した。
 しかし宇宙人の返事は理解不能なものだった。
「彼らはぼくたちとはぜんぜん別の存在なんだ。でも君を大事に思っているぼくの気持ちを何とか伝えようとがんばっている」
 とうとう、アキトとユキコが同時に呼び出され、別室である処置が行われた。麻酔をかけられたようで、目を覚ますと元の部屋にいた。そしてアキトのペニスがユキコの乳房の間に移植されていた。
「これってどういう意味?」
「わからない」
 アキトは呼び出しを受けても、もう気持ちよくなかった。部屋に戻ってかつての自分のペニスを触ってやると、神経がつながっているらしく、ユキコは気持ちよくなった。
 このままではいけない、アキトはなんとか宇宙人にそれを伝えようとがんばった。再び処置が行われ、目を覚ますと、ペニスはアキトの股間に戻され、代わりに、アキトの頭がユキコの肩に移植されていた。
 首なしのアキトの体は執拗にアキトとユキコの双頭の体を犯し続けた。そして首なしが定期的に宇宙人に呼び出される間だけが、アキトとユキコの休息時間となった。首なしが宇宙人に何を伝えようとしているのかはわからなかった。



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