第51期 #14

やっぱ亀かな

ある者は笑い。
ある者は泣き。
ある者は旅の途中だ。
たぶんそれが人の世だ。

誰かは大きな流れの中に石ころを投げ。
誰かは懸命に落ち穂を拾い。
誰かは夢の中こそリアルだっていう。

人のすぐ側には光の入らない大きな崖かある。
僕らはそっちへ続く道を選ばないようにして生きてる。
でもそこにしか行けない者もいる。

彼らが崖に立とうとしている。
そこにしか道は続いていない。
戻ることも崖に立ち続けることもできない。
途中で逃げることはできるけど、それも全部同じこと。
たぶん宇宙が始まったときから繰り返されていることなんだ。

さあ、廻って次は俺の番。
自分で道を創って生き延びた奴もいる。
道を創ろうとしてダメだった奴もいる。
どう転ぼうが崖は迫る。
そこで俺は亀になってやり過ごそうと思った。
俺はゆっくり歩きながらこの先はどうなっているのかと、
頭をにゅっと出して、周りを見回すと、ちっぽけな自分の背中と、広大な世界と、
遠くにちょっとだけ崖が見えた。
その時自分がわかったんだ。自分が蛙だって、それまで蛙だったて。
自分がどこに立っていたかって。

俺だって、簡単に亀になれたわけじゃないよ。
家族や友達がいてくれたから、なれたんだ。
誰かが助けてくれたからなれたんだ。
自分一人じゃ無理だったのさ。
そうやって今はなんとか生きてるよ。
ただ問題を先送りにしてるって見方もあるかもね。
すぐに答えを求めないようにしただけなのさ。

そりゃたまにガメラになっちゃうかもね。
でも、そのうち道も見えてくるよ。

いつかは誰かを、竜宮城に連れていけたらな。
そしたらきっと、幸せかもね。
亀になった俺は、少しかっこ悪いなったかもね。
ロックンローラーにはなれなかったけど、ジャズプレーヤーには、なってみせるよ。
例えがちょっとわかりにくいかもね。
亀はずっと、時と生きてく。



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