第50期 #7
女子高生が自殺したと報道していた。 「いつの世も同じなのか...」 職業病だろうか?その自殺した女子高生が何に悩んでいたのか考えいた。 そして最愛の人を思い出す...。 当時、高校二年だった彼女は妙に大人びていた。その癖、少年のような外見でウルフカットにジーパン、タンクトップに重ね着していた。第一印象は『しかめっ面の少年』。 警戒心を剥き出しにし、不機嫌そうに顔を曇らせていた。 「何故そんなに顔をしかめているの?」と問うと、 「無表情だと不機嫌に見えるだけだよ」 初めて正面から見た彼女の瞳は奥へ行けば行くほど光を宿さず、悲しみで満ちていた。 それから互いの休みの日が重なれば必ず二人で会った。会えない日も電子メートで連絡を取っていた。それが私の日常になって行った。 会うようになって半年、喫茶店でお茶を飲みながら話していると彼女はこう聞いてきた。 『人の幸せの上に幸せを築いた人間がさらに幸せを願ったら、足台にされた幸せだった人はどう思うんだろう...?』 私は何も考えずに答えた。 「何でお前だけが、それ以上幸せになるつもりか?って思うんじゃない?」 『そう...』 それから彼女は雨が降る外をただ眺めていた。次の日、いつものようにニュースを見ていると、昨夜、電車に飛込み自殺があったと報道していた。 画面に写し出された写真と名前はよく見知ったもの...。 昨日言葉を交した彼女...。 「何で......」 思わず持っていたコップを落とし、足元でガラスが砕ける女性の悲鳴のような音がした。 彼女は七ヶ月前に恋人を自殺に追い込んでしまった。そしてその男性の家族から嫌がらせや誹謗中傷が絶えなかったらしい。 彼女が耐えれたのは私の存在があったからだと彼女の姉が教えてくれた。 彼女は私にほのかな恋心を抱いていた。彼女はそんな自身を許せなかった。思い悩んだ彼女は自殺した。 「私が殺してしまった...」 その思いも彼女の姉が渡してくれた携帯を見て投げ捨てた。 日付は彼女が自殺した日。一件しかない未送信のメールを開くと宛先は私だった。 『ありがとう』 だから私はもう考えない。私が考え、悩み、死を選ぶことを彼女が望んでいないのを知っているから。 きっと死んだ恋人と天国で幸せに笑っているに違いない。 そっと「おめでとう」と呟いた。 私の心にいるのは今でも自殺した彼女たった一人だけ...。 「貴方、早くしないと仕事に遅れるわよ? 「ああ...」 私は温くなった珈琲を胃に流し込んだ