第50期 #2

日曜日

「夏だな。暑いよ。」
「え?」
「いや、暑いなって。」
「まだ6月だよ。」
それっきり黙ってしまうと、下を向いてしまった。つられて僕も下を向く。
6月の中途半端な太陽の下で僕と君は一緒に熱そうな地面をみている。
「いや十分暑いだろ?今日は。」
と独り言をいってみる。返事はないようだ。
 アリが列をつくり規則正しく歩いているのを見つけた。しばらくぼんやりと眺めていたが、ちょっと邪魔をしてみることにした。
狙いを定め、つばをたらす。唾液の塊が列にぶつかると、アリたちは慌てふためき列を乱していく、別々の道へ進もうとするアリたち。まるで今の僕らみたいだなってぼんやりと考えながら、つばをたらすのをやめないでいると、ふいに君の声が聞こえる。しかしもう頭の中には届かない。このアリたちのように別々の道へと進んでしまっているのだから。
そのうちに、アリたちは列を直し何事もなかったように歩き出す。



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