第5期 #11

くたばれホピエンサモス

 ホピエンサモスどものやることなすこと、すべてが気にくわない。やつらときたら、なんでか知らないが僕を苦しめる。やつらは僕を苦しめるためだけに存在しているのだ。
 これは本当だ。真実だ。ホピエンサモスはいつだって僕を苦しめる。しかも、やつらはどこにでもいるのだ。政治家のほとんどはホピエンサモスだし、僕の学校の先生はみなそうだ。生徒もだいたいそうだろう。両親も……その疑いが濃厚だ。兄キなんか、有名私立高校にかよってるくらいだから、まちがいなくホピエンサモスだ。
 この世はホピエンサモスに満ちている。そして僕への悪意に満ちているのだ。証拠を挙げればキリないが、ちょうど今日、コンビニで、やつらの一匹に遭遇した。
 そのホピエンサモスは、うまいこと店員に変装して、そ知らぬ顔してレジにつっ立っていたが、僕ぐらいになってくると、一目でそれとわかる。バレバレなのだ。さもヒマぶって手のツメの先をながめているうつろな視線は、まさに若いメスのホピエンサモスのそれだ。
 僕はわざと気づかないフリして早足に雑誌を取り、ずんずん歩ってレジのカウンターに本をたたきつけてやった。
 そしたらホピエンサモスのやつ、雑誌の表紙を見て、それから僕の顔を見た。
〈中学生でしょ?〉
 あえて口にはしないが、そうメスの顔には書いてあった。ホピエンサモスのやりそうなことだ。そうやって暗に僕を苦しめるのがやつらのやりかただ。中学生でなにが悪い? 僕は一度だって中学生になりたいなんて思ったことはない。すべてはホピエンサモスが決めたことだろ?
「八百円です」
 しらじらしく言うホピエンサモスに、僕は八百円をくれてやった。そして、けがらわしい手からレシートなんか受け取らず、雑誌をひったくってまた早足にコンビニを脱出したのだ。
 もうあのホピエンサモスのことは忘れよう。僕は無事に部屋へ帰れたのだから。ドアにカギをかけて、ベッドに横になると、買った雑誌をひろげてズボンを下ろした。
 なんてこった! 僕は見た。どいつもこいつもホピエンサモスのメスじゃないか。スッ裸になって股をオッぴろげて……その黒く塗りつぶされた部分の奥から、次々に新手のホピエンサモスをヒネり出そうとかまえている。未来の僕を苦しめるために!
 僕は雑誌を放り投げて布団をかぶるしかなかった。こうもやることなすこと、すべてが僕を苦しめるホピエンサモスなんか、みんなみんなくたばっちまえ。



Copyright © 2002 紺詠志 / 編集: 短編