第48期 #3
君が死んでしまうなんて思ってもみなかった。
ただ丁度良く眠れない夜なんで君に布団の中で問いかけたことがあった。
男「あのさぁ・・・。」
女「なに?」
男「人って、死んだらどうなると思う。」
女「ええ!!何急に?・・・でも昔子供だった時に同じこと考えたことがある。死んでしまったらパパともママとももう二度と会えなくてもし生まれ変わりがあったとしてもパパとママとも他人になっちゃうんだぁなんて思っていたら眠れなくなくなっちゃってすごく寂しくて・・・。」
男「正解!!」(みのもんた風に)
女「なあに。何かのクイズだったの?」(笑いながら)
男「そんな時、どうして欲しかった?」
女は男の頭を両手で抑えて自分の胸元に黙って手繰り寄せた。
男は鼻をすすりながら嗚咽に耐えていた。
男「・・・正解・・・・」(言葉にならない声)
女「もうしゃべらなくていいよ。」
女も鼻をすすりながら優しく笑ってそう答えた。
優しい君の胸 温かい温もり。
男は熱海の海に数年ぶりに来ていた。女と出会って過ごした街だ。
寂れてしまったけど今思えばよくできた場所だ。
男は防波堤から海を眺め、一つの空き缶に執着していた。
雨が降ってだいぶ強く振って男は空き缶に聞こえるはずもない雨水がたまる音を聴いてそれを楽しんでいた。
いつか二人で熱海の花火大会を仕事をずる休みして観る計画を立てていたときにもああやって二人の間にジュースの缶が置かれていた。
空き缶に雨が満たされてゆく事は同時に自分の思い出も満たされていくようなそんな気持ちだったのかもしれない。
僕は馬鹿だ。君が死ぬことなんて知っていた。だってそういう病気だったんだもの。でも僕は君に卓越した人間なんだって思われたくてあんな失礼な質問をして君をもしかしたら傷つけた。
君との思い出が僕の中で先走ったら僕はこうするんだよ・・・。
男は立ち上がり今まで見ていた空き缶の方へと歩き出していた。
男は空き缶に満たされた雨水の重みを感じながら震える手でそれを口へと持っていった。
「こらぁ〜!!」
遠く後ろの方から声が聞こえた。
男はびっくりして空き缶を落としてしまった。
運命の何とか。遠く後ろの方では傘もささずに一人の女性が自分に向かって叫んでいた。
倒れた空き缶からは雨水に溶けたタバコのニコチンが毒々しくこぼれだしていた。
「正解!!」
男は声を枯らして精一杯の大きな声で女に叫んだ。