第47期 #4

Tの基準1

今、僕の最も近くに住んでいる友人であり、僕の知っている中でも最も秀でた異常性を持つ男。
今日は、そんなTのことを皆さんに教えよう。

Tの家は四階建てのアパートの三階。八畳のワンルームで家賃五万。学生が遊ぶためだけに借りているラブホテルのような部屋だ。ある日、Tに酒を呑もうと呼ばれた僕。
久しぶりにTに誘われたせいか、Tの異常性を忘れていた僕は油断していた。僕は罠にはめられた小動物のようになってしまった。部屋に入ると目に入ってきた光景が漫画かテレビの中の世界だったのだ。
家の中には新しい大黒柱になろうとしているのではないかと思わせる勢いで、初夏の筍でも尻込みしてしまいそうな勢いで積み上げられている新聞。
天井からわずか30cmの隙間に作られたベット。そのベットから落ち、吐血したにもかかわらず二度寝したために二度と無くならない怨念のように残った血痕。
床が汚れるのが嫌なのか、今にも腐りそうな、いや、腐っているであろうダンボールを床に敷き詰め、それが汚れればその上にまた新しいダンボールが敷き詰めてある。
そして、服がない。この男がワンクールを同じ服で過ごすという意味のない精神修行をしていることを忘れていた。そのくせ靴下だけは毎日変えてやがる。
この男に新聞やベットがいるのかと疑問を持ちながらもこの部屋の汚さと、靴下だけは変えるそのTの妙な神経質な部分に部屋に入った瞬間から僕の頭はスパーク寸前。握り拳から血がしたたる。いきなり帰るわけにもいかない。こんなときは酒の力に頼り、酔って忘れるしかあるめぇ。
僕はアルコールに対してだけタンクローリーのような性能を発揮する自分の胃袋&肝臓に酒を流し込みまくった、酔いもかなり進んで来たところでTに尋ねた。
「こんな汚い部屋によく暮らせるな。」そのストレートな意見にTは何のこともない無邪気な子供のような顔で僕を見て答えた。
「うんこよりキレイ。」
お前の判断そこっ!!?
ありえない衛生基準を持ちながらも純粋な子供の心を持つ男T。

次回、Tの恋愛。



Copyright © 2006 ストレンジャー徳治 / 編集: 短編