第47期 #14

夢を見る世界

テレビで現代の若者についてのニュースが流れた。
ボクは一人、白で統一された殺風景な自室で、年代モノのテレビのダイヤルをカタカタと回す
テレビから流れるニュースに別段に気に留めるわけでもなく

流し目で映像を捉える。

最初に映ったのは小太りの男
話し方からして批評家だろうか。
年の頃なら45を超えたぐらいの小太りの男は
テレビの前に居る視聴者に向けて、我に正義が有りという態度でこう言った

「今の若者は夢を見なさ過ぎる。だから、二次元の世界に入ろうとするのだ」

批評家の発言は非常に癇に障る。
別に自分が二次元を愛しているわけではない。
別に自分が二次元を愛している者の味方をするわけではない。

では何故、癇に障ったのか。
既に別のニュースを読み上げているキャスターを尻目に
ボクは自分に問いかけて、一人で癇に障った原因を探る

テレビのキャスターが新しいニュースを取り上げる
新しいニュースは、幼き親が子供を殺すといった
凄惨かつ惨い話だが、今の世の中では極普通の事だった。

故に現代のボクでは心は動かされない。
キャスターがニュースを読み上げ終え、批評家がまた発言をするのを聞く

「最近の親は精神的に幼すぎる。我々を見習って欲しいものですな」

小太りの評論家が、自分が大人の手本であるように
胸を張りながら述べるを快く思わなかったボクは、その場でテレビを切った。

刹那、ようやく癇に障った答えが導き出された。

「この人達は夢を見れる時代の人。
 ボクらは夢を見れない、夢を知らない……
 だからこそ、仮想である世界に……夢を見れる世界に行きたいと考えているんだ」

誰に言うわけでもなく
自室で呟きながら、目の前に広がる小さな世界をボクは夢を探しに旅立った



Copyright © 2006 藤田竜馬 / 編集: 短編