第46期 #4
「もういかせてくれよ」
「いやよ」
「いやっつったってどうしようもないじゃないか」
「いやったらいやなの、わかって」
「わからんよ」
「少しくらいわかってくれてもいいじゃない」
「いいや、わからない」
「どうして」
「わかりたくないからだ。もう一度言う、いかせてくれ」
「いや、いかないで」
「まあ落ち着け、ってちょっと待て、痛い痛い。こいつめ」
「あの、もしもし、お邪魔の所を」
「ややっ、これはいい所に。どうか僕を助けて下さい」
「私は離れませんからね」
「やあ、ははは」
「何がおかしいんです」
「だって、おかしいじゃないですか、こんな形」
「私だってこんなの初めてですよ」
「それにしても、珍しい。ちょっと失礼しますよ」
「痛い」
「ああ、すいません。慣れてないもので」
「いたい痛い」
「失礼失礼。はあ、こことここが。なるほど。しかし、大変ですなあ旦那も」
「なんとかならないものですかね」
「すみませんが、こりゃあどだい私には無理です」
「困ったなあ」
「今から何したって無駄よ。もう手遅れよ」
「物騒なこというなよ」
「だって本当よ」
「と、とりあえず私は人を呼んできます」
「お願いします。命がかかってるんです」
「やめてよ、あんた。さっきから黙ってたら勝手ばかりして」
「あ、いえ、あのう、すみません」
「もう許さないわ。この人と同じ目に遭わせてやる、えい」
「ぎい」
「わわっ、ちょっと、他人を巻き込むのは良くない。穏便に、穏便に」
「ぐぐぐ、苦しい」
「だってこの人勝手に私の体に触ったんですもの。これくらい当然だわ、えい」
「ああ、ひどいことに」
「ぐぐぐ、身動きが」
「なんてこった」
「吐きそうだ」
「いい気味ね。ずっとその姿勢のままでいなさい」
「予想以上ですなこれは。なってみて初めてわかる壮絶さだ」
「でしょう」
「生きてる心地がしない」
「でしょう」
「ええ。たまりません」
「ようやく寒さも和らいできたというのに、かないませんな」
「本当です。まさかこんな」
「それにしても、なんとも名残惜しい」
「さっきから煩いわよあんた達。そんなに、地獄を見たいのね」
「違います違います。止めて下さい。止めて下さい。わ、わ、ぎゃあ」
「あああ見て下さい、私の体。ひい、ひい」
「ややっ、早くもそんなに」
「いやだ、いやだ」
「ゲホッ、ゲホゲホおえ」
「ひい、ひい、焼けるようだ」
「ああ、僕も、どうやら、おえっ」
「ちくしょう、ちくしょう」
「ぐわっ、ああ、おえっ」
「ちくしょう、ちくしょう」