第46期 #3

通り抜ける道路の端で

 また電車が到着したのだろう。大勢の人が、足早にやって行き通り過ぎてゆく。僕らは彼らより低い視線から声をかける。
「お疲れ様でした〜」
「お帰りなさい〜」
 歩く人は、ちらりとこちらを見、通り過ぎて行く。足元をゆるめることもせずに。
 ある人は携帯の画面から目を離すことなく、またある人は敢えて見ないようにして。時々行ったり来たりを繰り返す人がいる。その大半の人も、やがては通り過ぎてゆくのだけれど。
 いわゆる地べたにすわり、そこから道行く人を見るのは、僕らに、また違った視線を考えさせてくれた。
「もし良かったら、話を聞きますよ?」
 ほとんどの人が通り過ぎて行く中、意外と聞いてもらいたがっている人が、いることも知る。だから僕らはいるんじゃないかと思う。嬉しい話は一緒に喜び、哀しい話はときには一緒に泣き、哀しみ、愚痴には適度に相槌を打つ。僕らは一人一人の人生というものを、多少なりとも実感する。
 毎週金曜日。時間は夕方6時30分くらいから開始。早いときには8時におひらき。聞いて欲しい方がいれば、最長は翌朝5時まで。僕らは駅前の道にすわっている。あなたの話を聞くために。



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