第46期 #2

奇才アナウンサー「松本」の過去

松本は入社試験当時ボーダーライン上の学生だった.
ここは一発逆転しなければ俺は受からない。そう思った松本は面接官の
「何か特技は?」
という質問に好機を見いだす。
「俺にしかできないこと」
松本はおもむろに鞄からたますだれを取り出そうとした。しかし次の瞬間隣の受験生が
「あ、さて、あ、さて、さては南京たますだれ」
と唄いだしたのだ。狼狽える松本。自分の特技を奪われて平常心でいられる訳が無い。
狼狽しつつ松本は最早これしか無いと最後の切り札を出す。それは当時付き合っていた女性になぜ自分のような眼鏡達磨と付き合ってくれているのか?と聞いた時に彼女が教えてくれた、「自覚していなかった自分の特技」だった。

汗ばんだ掌をネクタイで拭い、タックル気味のダッシュで女性面接官をマットに倒し、彼女のおパンティーを確認した。
「湿度0%」
きらりと光る眼鏡達磨。しかし、ここからは彼を眼鏡達磨と呼ぶ事はできない。
彼は変身するのだ。そう、「彼女が彼を見初めた唯一の長所」が牙を剥く。

驚きのあまり声が出ない女性面接官。唖然とする男性面接官。他の受験者も口がぽかんだ。
松本は高速で口舐めずりをして、そのまま女性面接官の恥部にダイブした.あまりの衝撃に悲鳴を上げる女性面接官。だがその悲鳴が沈静するのに時間はかからなかった。小指をくわえ、必死に声を殺す女性面接官。助けを呼ぶのであれば声を上げるべきなのに、なぜだろうか?その答えは松本の口元を見ていただければご理解いただけると思う。
7分後。女性面接官が「はふぅ!」と鶴のような一声をあげたかと思うと、松本は恥部から顔を離した。松本の顔には絡めとられた陰毛と唾液ではない無色の液体が引っ付いて一瞬松本なのか確認ができない状態であった。その後ゆっくりと顔を上げた女性面接官は一言
「合格、です・・・」
と言い、恥ずかしそうにトイレに駆け込んだという.

この一件以来社内では松本の事を「舐め達磨」と呼ぶようになる.
(若い社員でこの話を神格化している者は尊敬の念を込め「舐め鬼神」と呼んでいる)


Copyright © 2006 水島陸 / 編集: 短編