第45期 #21
午後の授業、窓際の席は直射日光が入り込んで、眩しくて、カーテンを閉める。風が強い日だと、そのカーテンが揺れて非常に鬱陶しかったりする。窓を閉めればいいのだけれど、春の夏日で蒸し暑いときなどそうできないこともあった。
そんなある日、風の強い夏日の午後、わたしは鬱陶しさと眩しさを秤にかけて、悩んだ末に眩しさを選んだ。ぺしぺしと腕や頬をはたく、その鬱陶しいカーテンを、えいやっと前のほうに投げ滑らした。勢いが足らず、途中で止まった。
前の席にいた彼女がぴくんと反応して、一旦カーテンを見て、それから首を捻ってわたしを見て、わたしが「悪い」と軽く片手で謝ると、頷いてまた前を向いた。それでしばらくは気にせず授業を受けていたけれど、風がカーテンをはためかせ彼女にまとわりつかせるのが見えて、わたしは「うーん」と首を傾けた。カーテンは彼女を撫で、はたき、ときにそのちびっこい体を覆ってしまう。彼女は鬱陶しいほうを選んだようで、カーテンをそのままにしていた。ただ、その日の風はかなり自由だった。
カーテンは何度も彼女を覆い、彼女が授業を受けるのを邪魔する。彼女は特に抵抗せず、風がおさまるのを待って、カーテンの揺れが小さくなってから、黒板を見てノートに文字を記していく。
またカーテンが彼女の姿を隠す。わたしはマジシャンのハンカチを思う。マジックのコインのように、カーテンが彼女を消してしまうんじゃないかと、そんな想像をした。
何故だか妙に不安になり、わたしは机ごと少し前に移動して、左手でカーテンの端を押さえた。カーテンはわずかな抵抗を見せる。わたしは窓枠に肘を置いた。座る位置をずらして、楽な姿勢を取る。また風が吹く。カーテンが揺れる。何か遊びたがっているようにも思えたけれど、わたしは前の席の彼女が消えてしまわないようにと、カーテンの端を押さえ続けた。