第45期 #19

なあ、われピッツァくいたないか

なあ、われピッツァくいたないか? え? 外いくんめんどくさいって? おまえ勘違いしてんのちゃうか。誰が食いに行くゆうてん。え? 注文すんのって? そなもん、わいがつくるに決まってるやんか。ほら、まかしてみんかい。ここにな、粉あるやろ。これは菌や。バイキンちゃうで。味方菌や。ほらボウルかしてや。油と水。ん。こねまっせー。さくっとつくっちゃるけえのおー。ええか。今から30分焼くで。わい、その間に服きてくるからな。おお、ええ天気やのおー。時間になったらタマがやけるからな、これにトマソーのせるんや。つっこまんでええで、トマトソースの略やからな。

「眠ってるワシの部屋をごんごん叩いて兄貴がやってきてワシを叩き起こしてはピザつくるゆうんで、ワシなくなく兄貴の手伝いさせられてん。兄貴、こんなもんどこでおぼえてきたんや、女か、ってきいたら兄貴だまっとるねん。なんやクッキングにでも目覚めたんかって聞いたらおまえ黙ってこねとれってな。ほんまようわからん人やったわ。けどなあ、そのピザがばりばりうまかったんやー。ウソや思うやろ? わしそのピザ今からつくろ思うねんけど、うちにピザ食いにこおへんか? おおマジか! すぐに来んねんな。わかったわ。部屋の鍵開けとくで入ってきいや。ほな、すぐタマこねなあかんからもう切るわ。またメールでもいれといてや」

兄貴、聞いてくれやー。玲ちゃんうちにきてくれるゆうたでー。これも兄貴のピザの、ピッツァのおかげやぁ。なあ、兄貴。兄貴今ごろ地獄におるんかのー。兄貴のことやから鬼しばきまくっとるやろ、なあ、兄貴。なあ、あの日な、ワシにピザつくってくれたあの日な、バスに乗り遅れるゆうてチャリで行ったやんか。もしワシにピザなんかつくらへんでそのまま乗っとったら、兄貴まだ生きとったんちゃうか……ま、兄貴、その言訳はあとでするわ。ワシまだ生きときたいねん。玲ちゃんにほれとんねん。気合いれまくってつくるわ。あ、あ、あれ? 兄貴ー、さっき店でこうたチーズとパパニカ、入ってへんわ、マジで?

「玲ちゃん、何度もすまんなーわしや。あんなーすまんけど、スーパーでチーズとな、あのパパなんとかこうてきてくれへん? パパなんとかって、あのなあピーマンの黄色とか赤のやつ。今どのへん? おう、もうちょいやなー」

兄貴ー、わし、ほんまにピッツァつくれるんか不安なってきたで。兄貴、地獄でわしのことみといてえや!




Copyright © 2006 宇加谷 研一郎 / 編集: 短編