第44期 #9
其処に只二人が居て、深紅のソファがあって、世界は満ち足りていた。
三年後の十八歳だけを夢に見る二人は、煙草を吸って、酒を飲んでいた。
笑う、泣く、寝る、縋る、耐える、そして死を思う。
崖の上に立つ足が踏み出す事を怖れ、いや、怖れたわけではなく、希望を見ようとしたが為に永遠は去る。
崖から宙への道ではなく、死を傍に置いて尚現在を歩く事。
生きとし生ける者が踊り狂う世界で、二つの幕が同時に引かれる寸劇。
主演の重荷から逃避した人間に、次の役は回ってこない。
桜色の花弁が無数に舞う中で、腕は、幾許もの白を交ぜる事ない深紅だった。
セヴンスターの香りは、今も未来を謳っている。