第44期 #24
怪談話にも色々パターンがあるよな。
例えば、何かが追いかけてくるとか。
例えば、一定の行動をすると死ぬとか。
今言ったようなのも恐ろしいんだけど、一番地味に恐ろしいものって『未知の存在を自覚した時』なのではないかって思うんだ。
怖いよな。
考えて見ろよ、真っ暗な部屋の中に閉じこめられて、明らかに『何か』の気配がする。
そんなことになったら、俺なら速攻で取り乱す。
『何か』に気取られないように、物音を立てないように、ひたすら部屋の隅でガタガタ震えている様な気がするよ。
昔から人は『何か』が怖くて、それに対抗するために『名前』をつけてきたんだ。
森の奥で黄と黒の縞々な物に襲われた。
これは怖い。
でも、昔の人はそれに『虎』と名前をつけたんだ。
『虎』は凶暴で襲われたら危ない。
それは身の危険と言う意味で怖いけど、黄と黒の縞々はもう『恐怖』の対象じゃなくなるんだ。
動物だけじゃない。
人は現象にまで『名前』をつけた。
大きな雷に『雷獣』
夜道の良くわからない音に『小豆洗い』
自分の母ちゃんに『寝太り女』
…すまん、最後のは不適切だった。
でもさ、そうやって『名前』をつけることによって、『知らない物』を『知っている物』として扱い、恐怖を克服してきたんだ。
ここまで、ぐだぐだ喋って、俺が何を言いたいかって言うとだな。
つまり、『未知なる物は恐怖である』と言うことなんだ。
わかるだろう?
…なら、本題に行くぜ…ありのまま起こった事を話すぜ!
『数ヶ月は客のいない俺の部屋のトイレのペーパーが三角に折られていた』
何を言ってるのか わからないと思うが俺も何を起きたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
単純な恐怖の 片鱗を味わったぜ…
なんだよ…反応鈍いな…
は?!『女を口説くのならもっと手短に』?!
あ?何言ってんだよ?!
口説いてんじゃねえよ?!
『怖がった振りして部屋に転がり込もうとしても無駄』?!
そんなんじゃねえよ!
なんだよ。それ。冷たいな! マグナムドライだな!!
あ、待て、切るな! 冗談だから!!
切らないで下さい!!
あーあ…ほんとに切りやがったよ……
人の話を聞けってんだよな…
ちくしょう……さすがに今は一人になるとゾクゾクするぜ…
それにしても…誰がトイレットペーパーなんていじったんだ……ん?なんか声が…?
『モウ オデンワハ オワッタノ?』