第42期 #12
テーブルの上にはロックのウイスキーが三杯。出席者は三人。
中から鍵のかかった部屋に三人だけ。天井から吊り下がる裸電球が唯一の照明。鍵のかかった窓が一つ。外は日が落ち、暗い。
闇。廃屋。三人。影。テーブル。グラス。ウイスキー。
その光景はさながら、ハードボイルド映画に出てくるシーンのようだった。
仕事の成功を祈るためか、最後の宴のつもりか、よくクライマックスに入る直前にこんなシーンが出てくる。古臭い演出だが、それには命をかけた決意が感じられる。
今の状況は、そんな映画ほどかっこよくはないが、皆それぞれ相当の強い意志がありここに集まっている。
誰も何もしゃべらない。沈黙。
向かいの男が最初にグラスに手を伸ばす。
「成功を祈って・・・・・。」
そう言ってグラスに口をつけた。
「成功を祈って・・・・・。」
隣の女もグラスを持ち、そう返した。一気に飲み干す。
そして、私も覚悟を決め、青酸カリの入ったウイスキーに手を伸ばす。
「成功を祈って・・・・・。」