第40期 #7

紅の祝福

私は千沙、中三。私が良平に告白して、つきあいはじめたのは今年の夏。恋人になっても、うまくいくと思った…。
 秋になった。
 私なんか、良平とはつりあわないのかもしれない。
 良平、私のこと好きなのかな?
 いつものようにデートに誘ったら、ドタキャンされた。
 ケータイへ電話してくれればいいのに、私の家に断りの電話をかけてきたのだ。
 べつに待ち合わせの場所は電波の悪いところじゃないからつながらなかった訳はない。
 待ち合わせの公園で心を弾ませながら、良平を待っていた。
何時間待っても良平は来なかった。
 私だけ、好きなだけなのかな。こんな気持ちが続くのはイヤ。
「ねぇ、今週の土曜日、ヒマ?」
 二人きりになったとき誘った。
「いつもの待ちあわせの公園で、話したいことがあるの。良平がハッキリしてくれればいいだけの話だし」
「え?」
「じゃ、時間は午後の三時。バイバイ」
 呆然とする良平を置いて立ち去った。
 私は三十分くらいしか眠れなかった。
 待ちあわせの公園に着いた。
 良平はまだいない。
 私はベンチに座って、待った。
 待ち合わせの時間から五分過ぎても来ない。
「お待たせ」
 良平だった。
 着ている肩当てと肘当てのついたグリーンのセーターに、ブラックのジーンズ。
 私はベンチから立ち上がった。
「ごめんな。遅れて」
 私は首を振った。
 沈黙。
「えっと、とりあえず座ろ?」
 隣り合わせに座って、再び沈黙。
 聞きたいことは決まっているが…
「あの、話って?」
 良平から切り出してきた。
「良平さ、私のこと、好きじゃないのかな?」
「そんなことない。俺は、千沙のことが好きだよ」
 うれしかった。でも、なんだか、まだ気分は晴れない。
 私の顔が曇っていたのか、私の顔をしっかりと見ていた。
「友達のときは、気軽だった。だけど緊張しちゃって…」
 良平は私から目をそむけて、うつむく。
「ごめん。こんなの、いいわけだな」
 良平も、苦しんでたんだ。
 そうだよね。ずっと友達でいたのに、急に恋人になるなんて、私のわがままだよね。
 私は涙がこぼれた。
「千沙!?」
 心配する良平に、私は首を振ってみせた。
「ごめんね。私、自分のことばっかり考えてて、良平の気持ちなんか、ぜんぜん考えてなくて…」
「もう逃げない。まっすぐ、千沙を受け止める」
「ありがとう」
 涙に声が震えた。公園の木々が葉音を立てる。
 それは、拍手のようだ。
 今日から私たちは、本当の恋人。



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