第4期 #4

賢者の頁

「……          ?」
「     !」
       、                。
      、     。
           、       。
――          、       。
「 、     」
 
 え? はい。私がこの頁の責任者ですが……。これは済みません。うっかりしていました。こちらの作品は賢者様を対象に書かれてありますので、他の作品よりも少々”あれ”の濃度が薄いのです。
 ええ、そうでしょうとも。一般的には知られていませんから、お客様が”あれ”を知らなくともなんら不思議ではありません。日本での印刷の歴史は一五九〇年にイエズス会が……。あ、歴史はいい……そうですか。実は”あれ”の水増しは印刷業界の常套手段でしてね。やはり”あれ”は実に高価ですからどうしてもね。まあ水増しといっても可愛いもんですよ。
 え? 根拠ですか? そうですねえ。たとえばこんな経験はありませんか。ある本を開くと眠くなる。読めば読んだで数行分の記憶がなかったり、同じ所を繰り返していたりで、あげくに用事を思いだす。
 どうですか。こういった本は出版社が”あれ”の量を渋ったのが原因です。
 もちろんこの頁も”あれ”は少々薄めてはありますが、余程の阿呆バカとんまの薄らハゲでない限り、あ、失礼しました。ハゲは関係ありませんね。とにかく普通の賢者様なら読める程度のものです。もし見えづらいのであれば照明を暗めにしていただければ……え? 真っ暗にしたのに見えない? 見えづらいのではなく見えないのですか。そうですか。きっと、余程お疲れなのでしょうね。体調がすぐれず一時的に見えなくなったという例もありますから、はい。
 は? 連休あけで気力充実。米粒に書いた般若心経でも読み上げることができるのですか。はあ、それは困りましたですね。まあこんな小説が見えなくてもどうってことはありませんから、堂々と俺には見えなかったと仰って頂けば良いのですが、なにせ世間には口うるさい連中が多いですから、やれ、どこそこの誰それは見えなかったらしい。賢う見えるがさては阿呆に違いないと吹聴してまわらないとも限りません。普段は見えているのですから、今回は見えたことにしておくというのも大人の判断ではありますよ。いえ、決して強制するものではありません。
 あ、やはりそうですか、結構です。私もそれをお勧めします。
 さすがは賢者様だ。



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