第39期 #6

インタビュー

ここに来たのは二年ぶりです。アイツ、まだ動かないんですか?そう。
立派な台座に乗って、もうオブジェですね。見に来る人も多いそうで。

ええ、あの頃の仲間のことですね。調べたんだ。いや、いいですよ。

ああ、あの子。中学出た後引っ越したらしいです。行き先は知らないな。中学の時は野球部のエースと付き合ってましたね。

僕?いや、僕は弓道部でした。高校でも。そうですね、あの頃は野球してたけど、みんなしてたし。

ええ、彼女好きでしたよ。アイツも結婚できるとか言ってましたし。でも中学入る時には冷めてました。そんな一途じゃないです。

うん、あいつね。いや、中学じゃ虐められませんでしたね。野球部に入ったけど、辞めて番長やってました。悪い奴がいてね、そいつが唆して。

いや、違う奴です。そっちは真面目に勉強してましたよ。

あいつは中学出たらまた唆されて、ヤクザに入ったって話です。それから見てないな。生きてるんですかね。

さっき出た彼ね。彼も中学じゃ不良だったけど、三年になると突然勉強始めましてね。高校も一緒だったけど僕は部活に燃えててね、疎遠でした。

うん、全国大会出ましたよ。もともと射的とか得意でね。楽しかったです、彼女もできたし。そう、同じ部の。ありきたりだけど青春て感じですね。

それであいつ東大に合格して、マンション買ってもらったんですよ。親が社長だったからね。それからすぐ失踪して。高校の時かな、親の跡継ぐのは嫌だとか言ってたし。御曹子ってそんなもんなんですかね。

これで終わりですね。あ、いいですよ。どうぞ。

アイツのこと?ええ、ショックでしたよ。小六の時でした。政府の人たちが突然ね。アイツ窓から屋根に逃げて、滑って電線に。有無を言わさず持っていかれちゃいました。そう、ここに。

ポケットの中身?僕が処分しました。

ポケットね、もう一つあるんですよ。そう、繋がってるの。中身は机の引き出しに全部入れました。それが入るんですよ。それから机も捨てました。

だって今の人間には不相応ですよ。アイツはいい奴でした。アイツを作った人たちもきっといい人だからでしょう。でもアイツの道具、今の人間に持たせたら世の中滅茶苦茶になっちゃいますよ。あの頃は僕も自分の為にしか使おうとしなかったですけどね。

うん、ロボットなんてまだできないし、アイツもきっと直らない。あと百年はかかるでしょうね。その頃には人間もちょっとはマシになってるんでしょうね。



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