第37期 #7

なみだ

涙が溢れた、ぼろぼろ、ぼろぼろ
あたしの小さい瞳から、あたしの大きな涙の粒が、
ぼろぼろ、ぼろぼろ、とめどなくこぼれた。
黄色いワンピースには幾つかの小さな涙の染みが出来た。
でもあたしにとっては、とっても大きな染みだ。
だって重いんだもの、あたしの涙の意味は。




このたくさん溢れた涙を、ビンにためることにした。
これにはあたしの色んなきもちが含まれてて、
やさしさだとか、かなしさだとか、つめたさだとか、あたたかさだとか。
ちょっぴり舐めてみたら、海の水みたいにしょっぱかった。
もし甘い涙だったら、どんなに泣いても、
この涙を舐めて、元気が出たかもしれないのに。
ちいさな溜息がでた、溜息ついたらしあわせ逃げるっていうけど、ほんとうかもしれない。




空を見上げた、流れる涙をおさえるために。
涙は瞼のうらにたまって、ふるふると震えていた。
あたしの体は、涙でぼやけたあの大きな空に吸い込まれそうになった。
あらっ空に比べたら、あたしのこのきもちなんてちっぽけなものじゃない。
自然とすーっと軽くなった、涙はあたしの体から消えていった、また会いましょう。




涙のたまったビンを眺めていたら、気付いたこと。
涙のいろはおもっていたよりもうつくしくて、
なんだか胸はキュンとなって、また涙が溢れてきた。
クリアーないろ、あたしの体からはこんなすてきな涙があったんだ。
やさしさだとか、かなしさだとか、つめたさだとか、あたたかさだとか。
ぜんぶがあたしを支えてたのね、だからいまこうやって生きてる。
泣いたっていいじゃない、溜息ついたって、次の日は大きく息を吸えばいい。





いま涙が心地良い愛しさに変わった。
泣きたい時は泣いてもいいよね、だってそれが生きてるって証拠。
全部流しちゃえば、さいごにはきらきらした世界が待ってる!きっと待ってる!



Copyright © 2005 シグレ / 編集: 短編