第37期 #5

夏の香り

 あの夏の日、あの人はいつも香りに包まれていた。
甘く、切ない香り。
夏なのに、いや、夏だからこそ、あの香りなんだろう。
男の甘い香りも悪くない。
あの人らしさにピッタリ合っていた。

 誕生日に同じ香水をくれた。
イブサンローランのジャズ。
大きさは違うが同じ香りに包まれて幸せだった。
でも、その幸せもいつの間にか溶けていた。
夏が終わる頃、一夏の恋はあの香りのように切なく消えた。

 二年経った今年の夏、あの香りが忘れられない。
思い出す、あの頃の二人。
 
 今でも好き、、、です。



Copyright © 2005 千葉マキ / 編集: 短編