第37期 #19

英雄

 小学4年の時だった。
 昼休みに体育だけ成績良くて人生は体力で開拓します派のクラスメイト群から「ゴザアテやろうぜ!」と誘われ、「ってかオレ校内のインドア筆頭で中学は当然受験よォ?」と辟易するもその裏腹では初めて誘われた! と心底感動しつつされど勉強大好きッコとしての自分像は崩せず「オレ食後は図書室で乱歩読む人だから」とメガネ位置を指先でずりあげながら教室の頭脳としてのポジションをアピールして返答すれば「まじ生意気」とか言ってむしろ反感を買って強制参加。
「ムカツクからメガネ集中!」と大変有り難いご指名にあずかり物凄い球威のボールをぶつけられる。「ゴザアテって遊びのルール知らないんだけど!」と悲鳴を挙げるがその都度直径20センチ余りのドッジボールがオレ目指して幾度も来襲。「オマエら所詮社会に出たらせいぜい働きアリだから無邪気に楽しめるの今のうち」と是非とも彼らの両親に伝えておきたい言葉を脳裏に浮べてる最中も間断なくボールの連打は止まずその挙句ボールがクリーンヒットする度オレが「ゲフフ」とか呻くものだから尚更彼らの熱狂は煽られ空を舐めるが如く炎上し超々過熱し振り返れば昼休み中終始オレはボールをぶつけられ放題という自分史上最大の惨劇。
 で昼休み終了の鐘の音と同時に脛にボールを当てられボールが遥か遠く校庭の端に転がってゆくと「メガネが取って来いよ!」と得意満面に言われ、どうやら最後に触った人間がボールを回収しなければならないのがルールらしく「このままだと5時間目開始に間に合わなくない?」と全身冷汗の焦りまくりでなぜか極度の緊張でか激しい尿意を催しつつ全速力でボールを拾って下駄箱に戻るとオレの上履きが見あたらず、隠されたに違いないが5時間目開始のチャイムが鳴ってしまっている以上探す余裕もなくそのまま3階にある教室へ飛びこめば既に授業開始中で途端に若い女の担任に睨まれ「しかもなんで上履き履いてないの!」とキレられ教室中がそれに対するオレの反応を見守り沈黙する中、オレは咄嗟に閃きちょうど当たってから窓の外の校庭へ飛び出るような上手い角度でボールを担任にぶつけ見事にボールを外に出し「今度はオマエ取って来いよ!」とその場しのぎの逆ギレ暴言を吐いて周囲を沸かして以来、教室の無上の賞賛を獲得しコイツ馬鹿だけど英雄じゃん? みたいな扱いを受け小学校卒業までその地位を不動のものとする。



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