第36期 #13

たぶん星の話

愛国心溢れる若者よ、ようこそ。
 キミはわたしと同じく、冥王星宇宙軍対台風星特殊部隊の一員であるはずだ。
 我々人類が地球に生まれて十億年。まさかあのような種族が、あのような惑星が、この太陽系に存在したとは、当時の人類は知らなかったであろう。あれだけ電波を飛ばしていたにも関わらず、知的生命体であるはずの彼らのシカトっぷりには十億年前の人類が可愛そうに思えてくる。この手紙も同じようなものかもしれない。
 わたしはこの星から亡命する。なにもこの星がイヤになったわけじゃない。この星の居心地のよさに代わるものを見つけたのだ。
 これから台風軍と戦争をする君に一つだけ言っておく。彼らは我々人類と同じではない。わかりあえない種族である。姿が違うだけで、文化も言語も考え方もまったく同じであるにも関わらず、我々が戦争を続けるのはそこにある。
 これはわたしに残されたたった一つの愛国心と言えるものだ。霊長類ヒト科というものが、この宇宙から消滅してしまうことを恐れている。
 わたしは、新しい可能性を求めて旅立つ。キミだけは、キミだけは霊長類ヒト科を守り続けていてほしい。


親愛なるお兄様へ。
 お兄様は、冥王星との戦争から帰ってきた所だと思います。そんな時に、このような手紙を読むのは辛いことだと思います。
 わたし達ニャンニャンがこの星に生まれて十億年。まさかあのような種族が、太陽などというものが存在していたとは、ご先祖様は思っても見なかったでしょうね。あれだけ電波を飛ばしていたにも関わらず、知的生命体であるはずのあの方々の気づかなさには、すこし残念であると思うとともに、これまでお互い気づかなくてよかったとも思います。
 どこか別の星にいこうと思います。お兄様、お父様、お母様や、この星がキライになったわけではありません。それよりも大切なものを見つけてしまったのです。
お兄様。このおばかな妹を許してください。そして、わたし達とあの方々はわかりあえない、と言うことを大切に思ってください。これは、ニャンニャンをニャンニャンとして守り続けるためには必要なことなのです。
 私がこの手紙を残すのも、お兄様が、あの方々と戦い続けてほしいという、愛国心からなのです。
 それでは、お兄様。ごきげんよう。

追伸 人類にもわたしたちと同じく女性軍人がいますが、絶対に仲良くならないでください。



Copyright © 2005 立岡ゆうてん / 編集: 短編