第35期 #15

溶けちゃった雪だるま

テレビでは、お花見をする人たちが楽しそうにお酒を飲んでいます。



サエちゃんはいつものように朝の6時に起きて、サボテンに水をあげました。猫のクル太はそれをストーブの前で寝転がりながら見ています。顔を洗い、歯磨きを済ませたサエちゃんは、お母さんの作るご飯をクル太を抱きながらテレビを見て待っています。キッチンからする焼き魚のにおいに、サエちゃんはちょっとうれしくなります。


昨日大雪が降ったので、サエちゃんは雪だるまを作りました。ドラえもんみたいな雪だるま。目はオセロのコマ、口は釘、頭に味付け海苔を貼付け、両腕にはポッキーを挿しこみました。夜、おトイレにいった時、玄関の雪だるまにサエちゃんはおやすみと言いました。


今日の朝ご飯は茄子のお味噌汁と大好きなホッケの開きです。サエちゃんは骨にこびり付いた身もしゃぶって食べました。
『ほっけおいしいよ』
サエちゃんがお父さんに言うと、
『この前、朝市で買ってきたやつだよ。サエも行ったっしょ?』
と、骨をしゃぶりながら言います。
お母さんが
『親子でみっともない。しゃぶんじゃないよ!』
と、言いました。
サエちゃんは骨をクル太にあげました。



お友達が迎えにくる8時、サエちゃんは支度を済ませてランドセルをしょって、いってきますと元気よく言いました。

玄関に出ると、昨日の雪だるまがいません。
サエちゃんは、トモミちゃんに
「雪だるまを見なかった?」
と、聞きました。
トモミちゃんは
「知らん」
と、答えました。

今日は、昨日とはうってかわって天気のいい朝です。北海道にも春が訪れます。


Copyright © 2005 水島陸 / 編集: 短編