第33期 #13

三人目のおじいちゃん

僕にはおじいちゃんが三人いた。

お父さんの実家にいるおじいちゃん。
お母さんの実家にいるおじいちゃん。
そして、東京のおじいちゃん。

高校生になるまで特に疑問はなかった。自分は特別なんだって思ってた。
ただ、小学生になった頃(多分、その頃がお母さんの実家にいるおじいちゃんの一番古い記憶だと思う)お母さんの実家に従姉妹と弟とみんなで集まって手巻き寿司を食べていた時、弟や従姉妹には「おじいちゃん」と呼ばせているのに、うちのお母さんが『中沢さん』と呼んでいた。
だから、僕もおじいちゃんの事を『中沢さん』と呼んだ。そしたら、お母さんがすっごく怒って「おじいちゃんでしょ!おじいちゃんでしょ!!」って何回も言ってきて、僕はよくわからずに訂正したんだ。

今更、血が繋がってるかどうかなんてキムタク主演ドラマ位どうでもいい。

ただ、昨年東京のおじいちゃんが死んだ時、密葬にしたと聞かされて胸が苦しくなった。東京と言ってもここ5年位は地元に帰ってきて親と一緒に暮らしており、一昨年位からは入院していた。
死ぬ半年位前、実家に帰った時にお見舞いに行ったけど死ぬなんて思えなかった。元々痩せていたおじいちゃんがさらに痩せてはいたが、しっかりした声でこういった。
『おぉ、さとしか』
アルツハイマーというのは脳の病気だと聞いた。でも、おじいちゃんは久方ぶりに会う孫の顔をしっかり覚えていた。
学校は楽しいか?今どこに住んでいるんだ?そこの近くにおじいちゃん住んでいたんだよ。
など、たわいもないがたくさんの事を話した。
話している間、透き通ったガラス玉みたいな目で真っすぐこっちを見るものだから、嘘がつけなく「また来るからね』って心から思った。

なかった事にしたいのかって思った。おじいちゃんとおばあちゃんが二人ずつだとバランスがいいから。本当は死んだおじいちゃんが均衡を保つ中にいる一人なのに。

別に、今更血が繋がっているかどうかなんてアイドルの成人式位にどうでもいい。

ただ、僕にとっておじいちゃんは三人いるってだけで、一番目二番目三番目なんて順番はつけられない。だから、死んでも存在していたという事を過去に出会った人たちへ伝えて欲しかった。来るか来ないかはどうでもいい。

あのガラス玉みたいな目を思い出す度、深くため息をつく。



Copyright © 2005 水島陸 / 編集: 短編