第31期 #27

暗い日曜日

「あなたの子どもを生むことは出来ない」女は何か突然のようにそう言ったが、それは実際突然なものではなくて、その言葉を聞くまで女の話をちゃんと聴いていなかっただけの話だ。確かに人の妻である女が、他所の男の、しかも学生を七年もしているようなロクでもない男の子を産む訳にはいかないだろうと、変に冷静に他人事のように思えたのは、つまりはどういうことなのだろうか。女はまだ何か言ったようだが、それはひどく遠くからの声のように思え、よく解らない。女の方に向き直ると、すぐ目の前に白いシーツに流れる黒髪だけが見えて、ふと、この女に顔なんてついてないんじゃないかと思い、肩を掴みこちらを向かせようとするが、止めにしてそのまま肩から背へと指を這わせ、背骨を辿り、尻を撫でた。女はこちらを向き、何か言うかと思ったが何も言わず、ただこちらを見詰めた。
「ちゃんと聴いてたさ。今ここに俺の赤ん坊がいるんだろう?」まだ膨れてはいない女の腹を撫で回しながら、そう言うと、いつの間にかしたたかに勃起していることに気がついた。
「赤ん坊がいるんだったらさ、付ける必要なんかなかったじゃないか」腹を撫で回していた指をそのまま女の秘裂に這わせ、乱暴にかき回した。何か言うかと思ったが女は何も言わず、抵抗もせず、そのことが腹立たしく思え、女に圧しかかると、まだ濡れていない肉を無理やり押し開けて、挿入した。両手で女の足を抱え、まだ何も言わない女の唇をこれも強引にほとんど舌を噛むようにして吸い、今までしたことがない程、激しく腰を打ちつけた。
「出すぞ」と耳元で囁いてみたが、相変らず女は何も言わず、そのまま膣内で射精した。背を震わせる快楽と共に、脳裏に、頭から真っ白な俺の精液を被る胎児の姿がありありと浮んだ。その赤ん坊は黒ずみ腐っていた。
 そのままグッタリと女に抱きついた俺の耳元で「あんた、泣いているの?」と女が言ったようだが、俺は泣いてるつまりなんてまるでなくて、ただ腐って崩れ落ちようとしている自分の体を感じていた。



Copyright © 2005 曠野反次郎 / 編集: 短編