第31期 #23

終焉

 呪いに相手の髪や爪をつかうものがあると読んだことがある気がする。あれは髪か爪でないといけないのだろうか。いまここには、あのひとの鬚があるのだけれど。
 忘れていった電気剃刀の刃のあいだに、埃みたいにたまっていた。紙の上におとしてみる。たいした量じゃない。ちょっと、砂鉄みたいに見える。紙を畳んでそのままくずかごに投げいれる。あのひとを呪いたいわけではないから。鬚しか残さなかったのが悔しいだけだから。


Copyright © 2005 黒木りえ / 編集: 短編