第31期 #2
ああ、自分が何もしなくても世界は回ってるんだなぁー。
学校をサボるとそんな気分になる。
きっと明日にはクラスメートは一日分俺より知恵がついてるんだろうなぁ。
なんつーか、俺ってば、世界に見放されてる気がする。
俺ほど優等生で、俺ほどサボる人は、他にはいないから、
センコウもクラスメートもあんまり俺のことを気にしていない。
『あいつは勉強できるから、サボっても可』という、特殊な烙印が俺には押されている。
そんな特殊な俺には当然友達も少ないわけで。
一緒にサボろうと誘って、ついて来てくれる奴はいない。
ああ、俺は孤独な高校生。世界にも見放された高校生。
誰か俺をさらってくれ……。
ああ、俺、またアホっぽいこと考えてるなぁ。
アホっぽいこと考えるくらいなら授業出ろよ、俺!
「おーい」
……でもなぁ、授業はつまらんからなー……。
「おーい、ってば」
「あ?」
やっと、誰かに呼ばれていることに気づく。
「やっほー」
「太田?……授業は?」
「さぼった」
「お前がサボり?真面目君なお前が?……らしくねーな」
「いやー、たまにはサボってみようと思って」
「そうか」
「しかし、この時間、制服姿でゲーセンにいるとは凄い度胸ですな」
「そんな俺を見つけるお前もスゲーよ」
「いやー。真面目君な僕も、時々思うわけよ」
「何を?」
「『サボりてぇ』と」
「へー。俺は『授業に出てぇ』と思うよ」
「出ろよ」
「お前も、サボりたきゃサボれよ」
「だって、僕、真面目君だし」
「俺も、サボり君だし」
「サボり君って……なんだよ、それ」
「はっはっはー!でも、今日ここでこうしてお前に会えてよかったよ」
「なんで?」
「お前も、『サボりてぇ』とか思うんだなぁと思うと、
なんつーか、かろうじて俺も世界とつながってるんだなぁ……と、思って」