| # | 題名 | 作者 | 文字数 |
|---|---|---|---|
| 1 | ゾンビになったら | キノ | 686 |
| 2 | 秘密クラブ | euReka | 1000 |
お母さんがゾンビになったら殺してね。そう言っていたお母さんは、ゾンビになった。
唸り声をあげて、僕を睨みつけるお母さん。それは、もうお母さんではなかった。血走った目で今にも僕に襲い掛かろうとする。でも、ロープで手足を縛っているから、ただもがいているだけだ。
数分前、お母さんはゾンビに襲われた。家から出ないでとあんなに言ったのに、外の様子が気になるからと出て行ってしまった。血相変えて戻ってきたお母さんの腕には、噛まれたあとがあった。もう遅かった。
お母さんは、すぐに自分をロープで縛るように言った。そして、みるみる間にゾンビになった。
僕は動きやすいよう学生服を脱いでから、キッチンに行くとビニール袋を手に取った。これを顔に被せて、ロープで首を絞めれば、顔を見ずに殺せる。
ゆっくりとリビングにいるお母さんのもとへ戻る。あいかわらず僕に襲い掛かろうと歯を剥き出している。
ごめんと呟いて、噛まれないように気をつけながらビニール袋を頭に被せた。ロープを首に巻き付けていく。それから、手に力を込めた。
静かだった。自分の心が静まり返っていた。まるで何とも思っていないかのように、淡々と絞めていく。しばらくしたら、お母さんは動かなくなった。
カチカチと時計の音が響いている。それ以外、なにも聞こえなかった。
ふとテーブルに置かれた2人分の食事が目に入った。ゾンビになる前、お母さんが作ったものだ。いっしょに食べるはずだった。
立ち上がりテーブルの前に座る。丁寧に作られた愛情のこもったおにぎりとお味噌汁。いただきますと言って、手に取り頬張る。お味噌汁をすする。涙が頬を伝う。
秘密クラブに入るためには、自分の秘密を告白しなければならない。
「このクラブは学校の部活動として正式に認められた活動です。あなたの秘密は部員に共有されますが、外部に漏れることは決してありません」
私はそんなことが書かれた秘密クラブのチラシを手にしながら、旧校舎の片隅にある古びた部室のドアを叩いた。
するといきなりドアが開いて、頭から血を流している美しい男子生徒が現れた。
「今戦争中なんだけど、入部希望の女の子?」
私は反射的にドアを閉めようとしたが、その瞬間に爆発音がしてドアごと吹き飛ばされた。
しばらくして目を覚ますと、私はヨーロッパの古いお屋敷のようなやたらと装飾が多い部屋の中にいて、ここはどこですかと質問すると、秘密クラブの部室さと頭に包帯を巻いた男子生徒は答えた。
「驚かせちゃってごめんね。部室内戦争はとりあえす停戦したから」
次の日、私が学校から帰ろうとしていたら二人の美しい男子生徒に両腕を掴まれ、昨日さんざんな目にあった旧校舎の部室へ連れて行かれた。
部室のドアが開くと、昨日と同じヨーロッパ風の部屋が現れて美しい男子生徒と美しい女子生徒が左右に分かれて並んでいた。
「ようこそ、秘密クラブへ!」
長い髪が綺麗な女子生徒が前に出てきて、わたしが部長ですと言って私と握手をした。
「われわれ秘密クラブの部員はあなたの入部を歓迎します。さあ、この入部届にサインを」
いやあ、昨日は軽い気持ちで見学に来ただけで……自分はあなたたちみたいに全然美しくないし、戦争もちょっと……。
「秘密クラブは秘密を共有することが目的ですし、あなたは十分に可愛いじゃありませんか。まあこの部では、何を秘密とするかの基準をめぐって昨日のような戦争が起こってしまうこともあるのよ」
じゃあ、私の秘密もダメな場合があると?
「いえ、どんな秘密でもその人にとっての秘密は最大限に尊重されるべきです」
入部するかどうかは別にして、秘密を守ってくれるなら私話をします。
「ええ、お聞きましょう」
私の秘密は、お父さんが宇宙人だということです。
「へ?」
私には物体を動かしたり破壊したりする宇宙人の能力があって、小さい頃、母の故郷にある山を消滅させたことがあります。
「ま、まあそれも秘密と言えば秘密ですが……その、あなたには超能力クラブのほうが……」
「きっと彼女は超能力を使いたくないから秘密クラブのドアを叩いたのですよ、部長」