第281期 #2

口コミ

レストランの店長が経営者に報告していた。

「売上もキャンペーンも順調です。ただ……例の口コミが、今日は投稿されていません。」

社長は首をかしげた。
「例の誹謗中傷のコメントですか?」

「はい。実は昨日もありませんでした。毎朝八時ごろ、必ず投稿してくるのに。二日続けてないのは初めてです。」

「もう二年になるんでしたね。」

「ええ。あのお客さん、二年前に来店してから、何が不満だったのか分かりませんが、毎日欠かさず中傷を書き込んでいました。年末年始もです。それが突然止まりました。」

社長は腕を組んだ。
「急にやめるとは考えにくいな。病気でもしたんじゃないか。」

店長は戸惑った表情を浮かべた。
「ですが、どこに連絡を? 中傷が止まったから心配だ、では警察も困るでしょう。」

社長は少し考えてから言った。
「顧客データに電話番号があるはずだ。地域の見守り窓口に相談してみよう。“常連客と連絡が取れない”なら理由として十分だ。」

「あれだけ毎日書き込んでいた人だ。何かあったと考える方が自然だろう。」

「分かりました。」

翌日、店長から連絡が入った。

「社長、例のお客さんは一人暮らしで、体調を崩して倒れていたそうです。相談を受けた市が救急隊を手配し、無事に病院へ搬送されたとのことです。」

「そうか……よかった。」

一週間後。
同じ口コミサイトに、店を絶賛する投稿が現れた。

——料理も接客も素晴らしい店です。命を救っていただきました。

そして翌朝八時。
また一件、称賛のコメントが投稿された。

社長は苦笑した。
「……あの投稿がまた途切れたら、そのときは本当に大ごとだな。」



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