第28期 #4

ロリコン

 今日もいい天気だ。まったく、近所のバカオヤジが言っていた「こんな日はナンパ日和だ」って。
 まぁ、それだけが理由って訳ではないが、ナンパをしにここ小学校前まで来た。なんにしてもやることが無いんだ。まったく、日曜の昼下がりに一人寂しいなんて冗談じゃない。
 ただ、ナンパする時は気をつけなきゃいけない。何せオレの好みは年下の……それも八歳くらいの女の子だ。
 なんだよ、こういうのを世間一般では『ロリコン』とか言うらしいな、しらねーけど。だが、おれは、世間一般が指すような男じゃねぇよ。別に二十代くらいのババァでも結構いけるぜ。
 まぁでもだ、それだと第一面白くない。何だってそんなババァを相手にしなきゃいけないんだ? デカイしヤタラ主導権を握ろうとするし、最悪だ。
 む、標的発見。俺の見立てでは九歳かそれとも……まぁいい、そんなことは重要ではない。重要なのは、あれはどう見てもババァじゃない事、そしてオレが失敗するかどうかという事だ。
 オレは一人でブランコをしている女の子の前まで行き、そして言った。
「ねぇ、僕とゲームしない」
「え、だれ?」
「ほら、この前あったじゃない。僕だよ、僕」
「……」
「ねぇ、僕んちすぐそこだから、ちょっと遊ぼうよ」
 むむ、なかなか手ごわいな。ケド見てろよ、俺には必殺技があるんだ。小さい奴ほど引っかかりやすい……これでどうだ!
「ねぇ、おうちにあるお菓子、一緒に食べようよ」
「……」
お?
「……あ、先生〜」
「え」
やばい、まさか先公がいるとは計算外だ。おれは全速力で走り出した。なにしろ捕まったら終わりだ、何とか逃げ切らねば。
「っは、っはっは、っは……」
あぁ、クソ、向こうの方が早い、つかまっちまう!
おれは今まで出したこともないようなスピードでジャングルジムの後ろをすり抜けた。目指す門の外まで、後十……七……五……やったこれで……。
「おまえ!」
 っガシ
……あぁ、嘘だ、ろ。
「お前って奴はいたい何を考えているんだ」
 ここの先公に捕まっちまった。腕を振り切ろうとしたが、だめだ、力が強すぎる。
「何処のもんだ?」
「西岬ヶ丘小学校です」
「あぁ、あの……ってことはお前島崎隆平だな。まったく、いたずらはもうするなよ! 分かったか」
「はい、ごめんなさい」
 あーぁ、今日もだめだった。
 おれは島崎隆平、今年で九才になる。


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