第28期 #2

瞬間移動

朝、目が覚めると枕元に僕の彼女が立っていた。

「どこから入ってきたの?」と寝惚け眼で尋ねたら、彼女はニッコリ笑って返事した。

「瞬間移動して来たの」だって。

「そうなんだ、すごいね」そう言って僕はふと気がついた。

彼女は先週マンションの屋上から飛び降りたんじゃなかったっけ。

気づいた瞬間、彼女の姿は跡形もなく消えていた。

そうして僕は何もなくなった空間に向かってそっと呟いた。

「また会おうね」って。

自由になった彼女にとって、瞬間移動などきっと容易いことに違いない。


Copyright © 2004 向坂隆也 / 編集: 短編