# | 題名 | 作者 | 文字数 |
---|---|---|---|
1 | 免許 | 蘇泉 | 553 |
2 | 人間の、いただき方 | みかんの騎士 | 744 |
3 | ツルギとサヤ | Fune | 826 |
4 | 決戦少女 | OS | 1000 |
5 | 星屑のダンス | 三浦 | 495 |
「昔はね、銃には厳しい規制があったんだ。市民が銃を持つことは禁止されていた。ただし、一部の国では例外があって、所持が認められていたところもあった。でも基本的には、一般人の所持は禁止。
ただし、例外もあった。銃を持つことが許されていたのは、猟師だけだったんだよ。」
2123年、大学の講義室で、教授はゆっくりと話を続けた。
「やがて時代が進み、猟師という職業そのものがなくなり、それに伴って銃の所有も完全に禁止された。人類は“無銃社会”へと移行したんだ。これは当時としては非常に大きな出来事だった。高校の歴史の授業で学んだはずだね。
同じような変化は、車の免許制度にも起こった。全自動・無人運転が一般化した後、人間による運転は制限され、限られた人だけに許可されるようになった。まるで、かつての猟師のようにね。
昔は、ほとんどの市民が運転免許を取得していた。運転免許証は身分証明書としても使われていた。でも今では、特別な許可を受けた人だけが趣味として運転できる。大多数の人は、自動運転車に乗るだけだ。不思議なものだよね。
ちなみに、当時『免許』といえば『自動車運転免許証』のことを指していた。でも、今『免許』といえば——そう、『宇宙空間移動装置乗用免許』のことを意味する。時代は変わったものだね。」
「みなさーん、集まりましたねー」
ここは、500年後の日本。少子高齢化などの影響により、人間の数は減少し、食料もなくなってしまった。その結果、人間は人間を共食いするということしか出来なくなってしまった。
ニコニコとナイフを持つ彼女はテーブルの前に立ち、周囲の椅子に座っていた男性達を一望していた。
「では、今から人間の、いただき方についてご紹介しまーす!」
彼女が告げていることは、その可愛い表情からは思いがけない言葉だった。
椅子に座った男性達は「おお!」と喜びの声を上げた。
「まずは、このナイフで人間を半分に切り落としまーす!」
彼女は、キラリと光るナイフを片手に持ち、目の前に用意されていた立派な人間を、すーっと簡単に断ち分けた。
それを見た周囲の男性も、彼女を真似して目の前にあった人間にナイフで断ち分けた。
彼女は、全員が断ち分けたことを確認し、「次に内臓を取り除きまーす!」と言って、その人間の体内にあった内臓を丸ごと素手でやった。
その時に、ぶちっと体から内臓が切れた音が聞こえる。内臓は彼女の手と同じほどのサイズであり、彼女がそれを持ち上げると、まだ血がポタポタと流れ落ちていた。
それを見て、周囲の男性も彼女を真似するも、間違えて心臓を抜いてしまった男性が一人いた。
「あら? 心臓を抜いちゃったの、我々の大事な栄養分なのに……手順を間違えた貴方は……食べられる側になってもらいます……!」
周囲の男性達は、一人の男性を囲い込む。囲まれた男性は、思わず立ちすくんでしまった。
「待ってくれ! やめ、やめてくれ!」
「男性ども、やっておやり!」
「はっ!」
「うわあああああああああああああああああああ!!!!!!」
その男性は、悍ましい叫び声を上げた後、彼女らの食料となったのだった。
世界に穴が空いた、穴から闇が形をとり、魔物となって溢れ出た。ある少年が剣を取り、魔物の前へ出た。
「俺が……守るんだ…….!!!!!!」
少年は人々が逃げ惑う中一人立ち向かった。剣が魔族の口から喉を貫き少年は返り血を浴びた。同時に魔物の牙が少年の腹と背中に突き刺さり絶命した、はずだった。窮地の人々の立ち向かう少年への思いが彼の魂を体へと戻し、体にかかった魔族の血が少年の体に変化を与えた。
剣と体は魔物の血を浴び魔剣と魔族の体となり、魂は人々の思いが重なり神格へと押し上げられた。
来る日も来る日も少年は穴から溢れ出る魔物を切り続けた。魔族となった少年の体は疲れを知らなくなり、剣は刃こぼれしなくなり、繰り返す戦闘の果て、少年の動きはより鋭く速く無駄がなくなっていく。
幾年過ぎたかわからないくらい、少年は魔物を切り続けた。果てのないように思えた戦いに終わりが訪れる。開いた穴がだんだんと小さくなり、ついには閉じた。魔物の侵攻は途切れ、静寂に包まれた。少年は立ち尽くし、朽ちぬ体から魂が抜け、役目を終えた魂と体は離れ、魂は世界に還り、体はずっとただそこに居続けた。
やがて人が帰り、歴戦の地に佇む遺体を奉り信仰が芽生えた。
今日もある少女がいつもの礼拝に見えていた頃、野蛮な心を持つ輩の群れが遺体の地に栄えた村を襲った。
礼拝の最中だった少女に蛮族が襲い掛かる。身構えた少女の背に、動くはずのない遺体に何かが再び宿った。
なんてことなく切り伏せられた蛮族。
襲い掛かる数々の蛮族を斬り払う。それはかつて、少年だったものが幾年絶え間なく続けた偉業の残滓。
少年と少女は出会う。それはこれから始まる旅の序章ーーーーー。
少女は川沿いに立ち、唇をかみしめる。
「前回が事件なら、今回は事変や」
時は来た。風が枯草をゆらし、頬をなでた。
半年前――
朝日が木々や建物を照らす。全てが生まれ変わる。少女は深呼吸をし、川沿いのウォーキングを始めた。新鮮な冷気が全身に満ち、心地よい。
奴がいた。遠くからでもすぐにわかる。山脈を背負うが如く威圧的なオーラを放つ。ジャージにキャップ、サングラス、バラクラバと全身を布で覆う男。少女の正面から猛然と迫り来る。
(今日はどちらが譲るのか…。)道はやがて交わる。少女は苦々しく思う。男は流れを変えず、岩塊のような圧迫感を漂わせ、揺るぎなく前進してくる。
直前に少女が折れた。その瞬間、ジャケット同士がこすれる鋭い音がした。互いの渦からエオルス音が咆哮したかのように。
男は一瞥すらせず遠ざかる。見えない距離となった時、少女は感情を爆発させた。
「私の朝を毎度、台無しにしやがって!」
この屈辱を晴らすのだ。
少女の試行錯誤が始まった。サンドバックに激しく何度もタックルする。敵を討滅するのだ。筋トレをし、良質な食生活を心がける。体型や肌艶がよくなり、綺麗と言われる事が増えた。
重厚な肉体に反し、俊敏性が高いかもしれない。想像上の宿敵は、膨れ上がり蠢く。足を狙おう。深夜の公園にヌンチャクの音が響きわたる。
闘志を見破られてはいけない。女性的な容姿にも注力した。三人ほどに告白されたが、そんな事はどうでもいい。
出陣じゃ。ウエイトジャケットにアームベストで武装する。フリルたっぷりのコートで隠すと、ヌンチャクを装着した。彼女は気づいた。(これ…ぶつかったらワイ内臓損傷や)――アホでもあった。
しかし、めげない。駐車場にスピードリングを置く。上半身を反らし、ステップを刻んだ。竹の如く敵の力を受け流すのだ。意味あるん? 分からなかった。続く迷走。月日は流れた。
万を期した――
苦渋を味わった時間と場所にいる。少女は宿敵の存在に目を走らせる。(いない…どこにも。)隅々を探したがどこにもいない。木枯らしが吹いた。冬になっていた。今までの労力は何だったのか。少女は拳を震わせた。これも全て、あやつのせい。
スケッチブックに奴の絵を描く。復讐を忘れない為だ。だが、思った通りに描けない。絵画教室の予約を入れた。先生よ、イケメンであれ。くそったれと呟きながら。
戦いは続く。今度は紙の上で――続
星が流れるのを見た。見つけた。星形の、そう、五つの頭を持つあのお星様だ。
砂漠をずいぶん走った。寒い。砂漠は夜、寒い。頭でわかっていても、体が知っていても、なぜだか温かい服に着替えるのを忘れてしまう。
あった。頭の三つを砂の中に隠して、あった。
きらきら、きらきら、ぽろり、ぽろり、さらさら、さらさら……
星屑が、それ自体が星のように輝く屑が、お星様から次から次へと落ちていく。
きらきら、きらきら、ぽろり、ぽろり、さらさら、さらさら……
そうか、これは一緒なんだ。わたしの頭の上、この星空から落ちるお星様と。
星屑が砂の上に落ちて、砂と星屑は形も色も似ていて、すぐに区別がつかなくなる。
あら。
お星様の砂から顔を出している頭の一つ、その下にいるのは……
わたしだ。
ここにいたのか。さがしたよ。
星屑が、小さなわたしの頭上に降り注ぐ。
そうだ。踊るのに邪魔なんだ、温かい服は。
きらきら、きらきら、ぽろり、ぽろり、さらさら、さらさら……
踊り疲れて、わたしも、わたしも、眠って、
大きなお星様、小さなお星様、
大きなわたし、小さなわたし、
星が流れるのを見たんだ。見つけたんだ。私を。