第270期 #5

囚われの姫

あるところに錆びれた檻の中にとどまっている姫がいました。
昔は近衛兵達が配置されていて、檻も綺麗でした。
その檻が綺麗だった時代、姫を毎日訪ねてきていた王子がいました。
王子と姫は檻の中で、外の綺麗な景色を眺めお話しをしていました。
ですが王子は、いつまで経っても外に出ない姫に愛想をつかして訪ねてこなくなってしまいました。
王子が来なくなった翌日、隣国の王子がやって来ました。
姫は同じように隣国の王子と、外の景色を眺めお話しをしました。
けれど、隣国の王子は隣国の姫に恋をしてしまい訪ねてこなくなってしまいました。
それから数ヶ月経った日、錆びれた檻に他の国の王子が訪ねてきました。
「あなたはなぜ、こんな錆びれた檻に閉じこもっているのですか?」
「夢を見ているのです。幸せだったあの時の夢を。またいつか、彼が戻ってくるんじゃないかと 期待して待っているのです。」
他の国の王子は寂しげな姫に恋をしました。
「私がその檻から連れ出してさしあげましょう。僕は他の人のようにあなたから離れたりしない。永遠を共にすると誓います。」
「嫌よ。もう信じたくないの。裏切られるのが怖いの。裏切られるくらいなら、私は一生一人でこの檻の中に閉じこもっているわ。」
他の国の王子は、姫を無理やり外に引っ張りました。
そこで姫が見たものは、綺麗な花畑と綺麗な青空。
そして、自分を愛おしそうに見つめる他の国の王子。
姫はもう一度、この人なら、信じてもいいかもしれない。
そんな淡い期待を抱いて、錆びれた檻の中には戻らないことを決意しました。
たまに戻ってきて外から眺めるくらいはするかもしれない。
だけど、もう二度と戻らない。
姫は、他の国の王子と共に旅立っていきました。
二人で幸せになれることを願って…



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