# | 題名 | 作者 | 文字数 |
---|---|---|---|
1 | 白い壁 | OS | 1000 |
2 | 東京魔法専門学校 | 蘇泉 | 963 |
3 | 思い | 病みねこ | 281 |
4 | Aの生徒と、Bの生徒 | euReka | 1000 |
ぼっと音がして蝋燭に炎があがり、タテオカの部屋を照らす。白い壁ががらんどうに感じる。なぜここにいるんだっけ。雨の湿った匂いがする。
お昼頃、私は自宅の鏡台を見ていた。深紅の口紅をつけ、髭を整えた。本当は顎にも欲しいけど、ナマズ髭程度しか生えない。タテオカは太ももをよく見る。無意識だろうけど失礼だと思う。でも、気に入ってもらえるようにスカート丈は計算する。私はイメージが浮かぶと偶然を装って会いに行く。話すと自分が見える。
初めて会ったのはオフ会らしい。覚えていない。タテオカは平均的な容姿だし、端で静かに笑っていて特徴がない。回を重ね気付いたのが輪の要にいることだ。人間関係が上手で人当たりがいい。私が悪目立ちすると、その度に流れを和やかに変えてくれた。
寒くない?と渡されたタオルで髪をふく。会えたけど、雨に降られてタテオカのアパートに。手垢のついた流れを期待されても困る。話の続きする?心配をよそに気持ちを汲んでくれる。
さっき話したのは「自我の分散と膨張について」だ。蝋燭の炎と共にカーテンに映る影も揺らぐ。あの壁の色どこかで見たとぼんやり思う。
どうして僕に聞くの?普段はしない質問をしてくる。いつも相手に寄り添うのに。タテオカの影が大きくなる。よく分からなくてと答える。自分の事なのに?部屋にいるタテオカは別人に見える。私は頷く。壁の色は庭先にある花に似ている。春を知らせる可憐な花。名前は…。
僕の何を知っているの?鋭い声が響く。突然に心が弾ける。確かに私は表面的な部分しか知らない。雨が降ることは本当は知っていた。会えばこうなる展開も分かっていたのか、もっと奥を知りたかったのか。私は自分の事もよく分からない。
いつまで壁でいればいいの?炎に揺らぐタテオカの目は、雨に濡れたままか高揚か光っている。それは、泣いているような、怒っているような、笑っているようにも見えた。
大きな影が壁に屈折している。その影からもう一人タテオカが出てくる。そばにいたタテオカと重なり一体化する。全身震えている。震えた手で私の頬を撫でる。ナマズ髭に移動し、さらに深紅の唇をなぞる。声が出ない。黙ってタテオカの目を見る。いつもなら視線を外すのに逸らさない。そのまま顎に触れ、首で止まる。喉を触る力が強くなっている気がする。
そうだ、花の名前はスノードロップ。花言葉は希望、恋の最初のまなざし、あなたの死を願う。
「かなり深刻な状態です。このままだと我が学校は潰れます。」
東京魔法専門学校の大会議室に校長先生の厳しい声が響いた。教員たちが座る長テーブルを見渡すと、誰もが難しい顔をしている。
「最近、魔法より科学技術のほうが人気ですが、我々への影響も非常に大きいです。国が科学技術庁を設立し、魔法部の公務員定員を大幅に減らしたせいで、卒業生の進路が狭くなりました。その結果、学生の質が低下し、出願者も激減しています。学生募集が非常に困難な状況です。」
校長先生は一旦言葉を切り、咳払いをした。
「さらに問題なのは、学生たちの魔法に対する意識です。一年生の自然魔法実践の試験では、ライターと氷入りのコップを持ち込んだ者がいました。試験官に‘これで十分だ’と胸を張ったそうです。魔法通訳基礎の試験では、Apple Watchでカンニングを試みた学生がいました。二年生に至っては、中級魔法移動を習得済みにもかかわらず、電動キックボードで通学する学生がいます。彼らに理由を尋ねると、『テレポートなんて意味ない。飛行機のほうが早いし安い』と言い返される始末です。学生ですら魔法を信じない時代になってしまったのです。」
教員たちの間に困惑の空気が漂う中、校長先生の話は続く。
「さらに、うちの学校はスマートフォンを禁止し、魔法通信を基本としています。しかし最近、トイレでこっそりTikTokを見ている学生が増えています。もう学級崩壊と言っても過言ではありません!」
会議室に重い沈黙が落ちた。教員たちは顔を見合わせるが、誰も口を開けない。やがて、魔法教務主任のW先生が手元のメモ帳を閉じ、ゆっくりと口を開いた。
「校長先生、確かに学生たちの規律には問題があります。でも…そう言っている貴方も、最近ベンツを買ったのではありませんか? それはどういうことですか?」
また沈黙が訪れた。教員たちは視線を交わしながら、校長先生の反応を待つ。
校長先生はしばらく口をつぐんでいたが、やがて観念したように頭を下げ、ぽつりと答えた。
「それは…科学技術の良い面を研究して、時代遅れにならないためだ。」
その直後、会議室の照明が勝手に明滅し始め、黒板には一行の文字が浮かび上がった。
「科学技術は魔法を超えた。」
教員たちは顔を見合わせ、誰かが小声でつぶやいた。
「校長…これは誰の魔法ですか?」
いつだって最高傑作を出してきたつもりだった。
でも、病んでる僕の作品はここの人たちには合わないみたい。
「読んでて辛くなる。」とか
「読んでて苦しくなる。」とか言われた。
僕にとってはとても良い作品なんだけどなぁ。
とても共感出来る良い作品なんだけどなぁ。
それもそうか。
ここに載せたものは全て実体験をもとに書いたもの。
そりゃあ、共感出来るよね。
でも、自分にとっての最高傑作が悪く言われるのはやはり辛い。
ここに載せるのは、僕に合っていなかったのかもしれない。
でもね、一番初めに出した作品だけは評価されたんだ。
それがとても嬉しかった。
だから僕は、これからも作品を投稿し続ける。
この学校では、入学すると二種類の生徒に分けられます。
私はBの生徒で、親友のトモカはAの生徒に分けられましたが、クラスは同じだったのでとりあえず安心しました。
入学した次の日、朝の教室でトモカとお喋りをしていたら、担任教師がやってきてホームルームが始まりました。
「みなさん、おはようございます。えー突然なのですが、入学のときにBに分けられた生徒は、制服を体育用のジャージに着替えて下さい。Aの生徒はそのままで構いません。Bの女子生徒は保健室や更衣室で着替えてOKです。とにかく十分以内にお願いします」
私は意味が分からないまま、Bの女子生徒と一緒に更衣室を探して、何とかジャージに着替えて教室に戻ったら、国語の授業がすでに始まっていました。
「注文の多い料理店は、近代における人間の欲望を皮肉った寓話です。注文が多いのは近代のシステムのほうであり、われわれ庶民はそのシステムの欲望に翻弄され……」
授業の内容は難しすぎて理解できませんでしたが、とりあえずジャージに着替えて授業を受けられたのでセーフです。
次の日、制服で学校へ行くと、やっぱりジャージに着替えろと言われるので、私はそれ以降ジャージを着て登校することにしました。
親友のトモカは、私と一緒に登校したり、気楽に話したりしていたのに、だんだんAの生徒と仲良くなって、私とは距離を置くようになりました。
私はもやもやした気持ちが溢れてきて、ある日、担任教師にAとBの違いは何ですかと質問しました。
「知らないほうがいいと思うが、Aの生徒は成績が優秀か、もしくは親が十分な資産を持っている生徒だ。あなたはそのどちらでもないからBの生徒と認定されたわけです」
確かに、トモカは頭が良くて家もすごく立派だけど、私は頭が悪いし家も母子家庭のアパート暮らしで。
「つまり、住む世界が違うのです」
私はクラクラする頭を抱えながら、下校するトモカの腕をを掴んで担任教師の話を聞かせました。
「知ってる。でも今一緒にいるのはまずいから、今夜八時に公園に来て」
夜、公園へ行くとトモカが木に縛られ、その傍らに黒服の男が立っていて、刃物をトモカの首にあてています。
「フハハ、少しでも動いたら……」
私は深呼吸したあと千分の一秒で魔法少女に変身し、黒服の男を吹き飛ばしました。
「あのわたし、できるだけ平和的にジャージ問題を解決したかったのだけど……」
ご、ごめんなさい。