# | 題名 | 作者 | 文字数 |
---|---|---|---|
1 | 大学サバイバル | 蘇泉 | 900 |
2 | だって、厳しいから | 宙空 | 1000 |
3 | 大好き? | もずく | 464 |
4 | 温もり | 病みねこ | 472 |
5 | 不思議な三角形 | euReka | 1000 |
6 | 悲しみを焼いて食う | 朝飯抜太郎 | 1000 |
7 | 何か | otokichisupairaru | 697 |
8 | 私である私 | たなかなつみ | 1000 |
「今年はすべての学部が定員割れ。このままだとうちの大学は潰れます。」
大学の内部会議で、学長が深刻な表情で話を締めくくった途端、経済学部のD教授が口を開いた。
「私に良い案があります。」
「ほう、言ってみなさい。」学長が少し身を乗り出して促す。
D教授は一度咳払いをし、堂々と続けた。
「我が大学は、国として独立するべきです。今の国から離脱して、新しい国家を作るのです!」
会議室が一瞬ざわつく。
「我が大学は、広大なワンキャンパスを持っているので、国としても十分な面積があります。独立すれば、全ての学生は自動的に留学生となり、海外の学歴を手に入れることができる。そして、我が大学はこの国唯一の“外国の大学”として、ランキングで一気にトップになります。
さらに、近隣のA大学やB大学とも交換留学ができ、留学生の受け入れも容易になります。学生にはビザを発行し、一般市民にも観光ビザを発行できます。キャンパス内に免税店を作ってもいい。税関も設けて、入国する観光客にオリジナルグッズを販売するんです。いや、いっそのことパスポートや国籍を売ってもいいかもしれない。二重国籍が許されるならばね。
学生たちは、この新しい国の公務員になるという選択肢も生まれます。これで我が学部の就職率もぐんと上がるはずです。
どうですか、皆さん。」
D教授が意気揚々と語り終えると、会議室は一瞬静まり返った。
その沈黙を破ったのは、教務課のI課長だった。彼はゆっくりと立ち上がり、真剣な表情で周りを見渡した。
「D教授、独立国家の構想、確かに斬新です。ですが…一つだけ大きな問題があります。」
「何ですか?」D教授がすぐに食い気味に尋ねた。「問題があれば、すぐに対策を講じます!」
I課長はため息をつき、淡々と答えた。
「実は、我が大学のキャンパスの土地、賃貸料がずっと未払いでして、地元自治体から差し押さえの警告が来ています。」
再び、会議室は静まり返った。しかし今回は、誰もが言葉を失った絶対的な沈黙だった。D教授も一瞬口を開きかけたが、結局何も言えずに閉じた。
「まずは…借金の返済から始めましょうか。」学長がぽつりと呟いた。全員が、無言で頷くしかなかった。
ずっと夢見ていた海は、青く、すみわたっている。
みたことないものに出会える。
しかし、木がない。
何だか寂しくなって、海岸を出た。
ゆっくりと進んでいくうち、街路樹がたくさん並んでいた。
しかし、つたがない。
もっと進んでいくと、秘密の山についた。
進むと、秘密基地がある。
ただずっとじかんだけがすぎていく。
近くにベットや本棚や食べ物をのせる皿等があり、自分を誰も独りにしない。
どうしても、泣きそうになるのは、騒がしさがないのかもしれない。
本棚から本を取り出して読む。
本棚は段ボールだけど。
コンプリートボックス的なものに入ってるほんはまるごとこっちに持って来て読む。
それに、この秘密基地には、動物が近寄ってくる。
だから、椅子だけを運びだした。
動物とひとくくりにいったが蛇や狐、山ウサギなどが来ることが多い。
珍しいのは、山猫。
どうぶつたちにからまれながらだけれど、
やっぱり落ち着く。
今の現代社会はおかしいのかもしれない。
そう私は思う。
だって、山や自然をを切り捨て、人間にとって便利にするだけなのだ。
だからかもしれない。
最近、世界史や日本史に授業で触れてきた。
六年生になってから、暫くだけど。
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私達子供たちが、それを示す。
それが、生まれてきた理由じゃないのか?
現実ばかりつきつけると現実バカになってしまうから。
夢だって、努力だって、懐かしい戦場だって。
全て、そうなんだ。
懐かしいから、ずっと、取り残されていくのかもしれない。
それを、一部の人間は消していってしまうのかもしれない。
誤魔化したいだけだと云っているわりには自分が誤魔化していることを忘れてはいけない。
しかし、気づかない大人もいると思う。
だから、こうしなさい、ああしなさいと大人は云うのだろうか。
それを、私はこう会釈する。
『髄より始めよ』
これは諺である。
相手にあれこれ言う前に、自分で手本を示せと言う意味である。
だから(?)、私達は現実バカと夢バカのほぼちょうど間にいるのだ。
決してバカということを云いたい訳ではないと云うことをわかってほしい。
途中から、現実じみた話になってしまって本当に申し訳ない。
さっき本を読み終わったから帰ろうと思う。
自分の、"本当の"帰る場所に。
帰る場所ではないかもしれないけど。
まあ、バカバカうるさかったことは詫びらせてもらう。
私が言いたいのは、
『 現実はそんなに好きではない。
だって、厳しいから。 』
ー終わり
@ 大好き? @
「ねぇ、ボクのこと大好き?」
n 回目の質問を言葉にし、少年は駐車場のブロックを飛び移っていた。
「また聞くん?大好きやって」
答えたもう 1 人の少年は少し怠そうに n 回目の回答を言葉にし、フェンスに身体を預けた。
「なら、いいや」
「もー、何回もこれ答えとるよな?そんな信頼ないん?」
「そんなことないの、聞きたいだけ」
ブロックの端までよろよろと歩いた少年は躊躇わずに降りるとにぱ、と笑ってもう 1 人の手をとった。
「いっしょかえろー!もう夕焼け小焼け流れちゃう!」
「あーほら走んな、転けるよ」
少年は小さく笑った。少年も嬉しそうに微笑んだ。
「ボクのこと、好き?」
その日、少年は同級生と喧嘩し親友の前でも苛立ちを抑えきれずにいた。n + x 回目の質問に、いつも通りの少し呆れた声色は出せず。少年は親友の変化に気がついていたはずだったのに。
「何回も何回も聞かないでよ、あぁもう、嫌いだよ、こう言ってほしかったの?」
言った時にはもう、遅かった。
「そっかぁ、じゃあ」
またねを言う前に、トラックが鈍い音を鳴らして急停止した。
ただ理由もなく死にたくなったので、君に連絡。
「助けて」
死にたいけど君とまだ一緒にいたい。だから気づいて、助けて。一人になりたくて逃げたくて、静かにドアを開け門を飛び越えた。部屋着のまま、スマホを持って街灯が照らす道をただ歩く。位置情報は切ってない。だから、気づいて、僕の元に来て抱きしめてよ。
定番の場所はどこだろうか。数時間で行ける場所。公園、山奥、海辺、駅のホーム。君が助けに来やすい場所。君の家から近い場所。電車はもう動いてなくて線路沿いにただ進む。君の近くまで。足が痛くて動かなくて寒くて泣きたくて苦しくてどうしようもなくて、気づけば走っていた。走り疲れてスマホを見たら君から返信が来てた。
「どうしたの。助けるよ」
言いたい言葉が見つかんなくて、何を言えばこの気持ちが伝わるかわかんなくて、たった四文字を打つ。
「会いたい」
すぐに返事が返ってきた。
「待ってて」
既読をつけて、返事を悩んでいると連絡がきた。
「今、後ろにいる。」
メリーさんみたいだなんて、ちょっと笑ってしまう。後ろから抱きしめられて溶かされて、暗闇の中に私の声が静かに響いていた。
床に転がった目覚まし時計を見ると秒針が止まっていて、叩いても動かない。
スマートフォンの時計を見るとまだ朝の六時前だから、寝過ごしてはいなかった。
「今日未明頃、〇〇県○○市にある自衛隊基地に、中国軍による複数のミサイルが着弾しました。周辺の住宅地にもミサイルが着弾したという情報もありますが、詳しい確認は取れていません」
布団の中でスマホのニュースサイトを眺めていると、そんな記事ばかり。
俺は壊れた目覚まし時計を悼む儀式を三十秒で済ませたあと、歯を磨き、アルバイトへ出かけた。
俺の仕事はティッシュ配りで、時給は一二〇〇円。
バイト先の事務所には、ポケットティッシュが何百個も入った段ボールが山のように詰まれている。
アルバイトの人間は、その段ボールと一緒に車に乗せられ、人通りの多い駅や繁華街まで移動すると段ボールと一緒に降ろされる。
今日は駅で降ろされたから、そこでひたすらティッシュ配りをするだけだ。
駅には、「戦争反対」のプラカードを持った人と、「民主主義を守るために戦おう」というプラカードを持った人が、お互いに距離を置いて立っていた。
しかし周りの人たちは、あまり興味がなさそうに通り過ぎるだけ。
俺も彼らの邪魔をしないように、少し距離を取ってティッシュを配りを始める。
「政治プラカードの二人と、ティッシュ配りの俺との間にできた三角形の中を、人々が通り過ぎる」
なんとなく文学的な表現だ。
俺は昔、小説を書いていて、そういう文学的な表現を好んで使っていた。
今でも小説を書き続けていたら、今の状況をもっと上手く表現できただろうか。
「あの、すみません」
民主主義のプラカードを持った人が、突然話し掛けてきた。
「ティッシュ一つ貰えませんかね。鼻水が止まらなくて」
俺は少し驚いたが、アハハと愛想笑いをしながらティッシュを渡した。
しばらくすると、戦争反対のプラカードを持った人もつかつかとやってきて、ティッシュを一つ下さいと話し掛けてきた。
「さっき鼻をかんだらティッシュがなくなっちゃって」
アハハ、どうぞどうぞ。
その日から、俺は一週間ぐらい同じ駅でティッシュ配りをした。
戦争反対の人も、民主主義の人も、やっぱり同じ駅に立ち続けていた。
俺は、この三人で居酒屋へ飲みにいったらどうなるかを想像しながらティッシュを配り続ける。
この状況を小説にしたら面白いかもしれないなと、考えながら。
悲しみが溢れ出て止まらないので食べることにした。
ただ、比喩表現なので物体の悲しみがあるわけではない。一休さんはどうやって屏風の虎を出した? 私は途方にくれた。
とりあえず、見えないものを形にするのは小説家であろうと小説家の友人に連絡した。
おれは趣味で書いているだけだけど。まあ面白そうだからやるよ。と友人は言った。
それから友人の2LDKに篭り試行錯誤すること三日。突如悲しみは具現化した。
私の悲しみは、リビング中央こたつ20?p上に浮かぶ。それは一枚の花びらのように端が尖った楕円形をしていて薄く、緩く反っている。大きい。
カジキマグロをペシャンコにしてヒレを削いだ感じと友人は言ったが、私の悲しみがそんなコミカルなはずがない。
私はこたつに足をかけ、そっと悲しみに触れた。思った通り冷たくて、しっとりしている。
少しぬめっとしてるな、やっぱり魚みたいだ、と友人が言ったが無視した。
私は悲しみの先を両手でもち、少し力を入れた。悲しみは簡単に折れて私の手に残る。
私は悲しみをまな板にのせて、みじん切りにする。涙が出てくる。私はそれを溶いた卵に混ぜて塩コショウをふる。フライパンを熱しているときに、ふと思い出して、台所の引き出しを探る。知らないスパイスの奥に味の素を見つけた。彼女がしていたように俺はそれを何振りか入れる。余った悲しみは鍋に入れて煮込む。最後にコンソメで味付けをしよう。
卵をひっくり返してまとめている時に、それまでぼーっと見ていた友人が米を洗い出した。俺はご飯がないと食べれないとか言って。
私は平皿に悲しみのオムレツを盛りつけ、スープと一緒にこたつに置く。ケチャップを手に持ち、何を書くか考えるが、あきらめて〇を書いた。
「いただきます」
私は悲しみに手を合わせ、スープを飲んだ。悲しみのダシが出ている。悲しみを掬って口に入れると、甘みと少しの苦みを感じた。
うん、うまい。
スープは当たりだ。次はオムレツだ。スプーンでざくざくと卵の腹を一口大切り取って、口に入れる。こちらは卵のコクと相まって濃厚な味。遠くに別の甘みを感じる。味の素か。彼女が愛し、私が偏見で食べなかった化学調味料が、卵と悲しみをうまく調和させている。
ぴろりろろろ〜んと電子音が鳴り、炊飯器の開く音がした。後ろで友人が言った。
「全部食べてるじゃねーか!」
私の悲しみは私だけのものだ。やるわけがない。
額に蝿がとまった。
音をたてて弧を描きながら縦横無尽に身体の周りに飛ぶ。
執念に纏わりつき、肌に張り付き、細い手をすり合わせ止まる姿にイライラした。
追い払おうと手をかざしたが、よく見ると黄と黒の縞模様の腹部があり、身体も一回り大きい。
鋭く長い毒針もある。
スズメバチだ。
私は驚き、息を飲んだ。
静かに身体の動きを少なくしながら、安全な場所に少しずつ移動を試みるのだが、スズメバチが鋭く太い毒針を光らせながら音を立てて周囲を廻る。
後退りすると寄ってくる。
恐怖に慄きながら、じっくり見ると激しく振動をし、握り拳の大きさの黒い毛玉状になってゆく。
フサフサとした毛に覆われていった。次第にマリモのようなものになった。
それが私の後を付いてくるのだった。
先ほどより安全な状況になり、安堵したが依然として不可解である。
得体の知れぬものは、私を主点とし整列しながら静かに分裂し、同じ大きさになると地面に落ちていった。
分裂する際に、毛が粉のようにフサフサと空中を舞う。
地面に落ちたソレらは驚くことに液体に変化し、墨汁の水たまりとなった。
全てのソレらが落ち水たまりが形を成した時、ソレは私の影とわかった。
影は陽炎のように揺らめき、様々な角度や大きさ、膨張や縮小をし、形状になる。
それとも私自身がその様になっているのか?
空間を影が這う。
液状の繊毛体のように四方八方を壁を飲み込み覆いつくしてゆく。
全てが影になった時、闇となり、夜となった。
闇は私を包み、静寂と安心が広がる。
子宮ニイル頃ノヨウダ
私のつぶやきが聴こえた。
横たわり闇を見あげた。
夜空だった。
満天の星が光輝いていた。
星月夜だった。
人ハ死ンダラ星ニナル。
声が聴こえた。
きっかけは些細なことだったように思う。道端の小さな縁石にけつまずいたか。いや、ただよろめいただけだったかもしれない。パーンという陸上競技のピストルのような音がしたと同時に、意識が途切れてしまった。
目覚めると私のなかだった。いや、それだと通常時との違いがわかりづらいかもしれない。要するに、自分の主導権がとれなくなっていたのだ。自分のなかにいて、自身の五感で周囲のことも自分のこともわかるが、身体も判断も、自分の意思では動かせなくなっていた。
私の代わりに主導権をとっているのも私だ。自分のことだからわかる。いま焦りながら周囲に応対しているのは私である私。第二の私だとか、偽の私だとか、そういうものでもない。それが証拠に、自分と同じ理由で戸惑い、自分と同じような失敗を重ねている。焦っては事態を悪化させる選択を招いているのだ。それをやっちゃ駄目なんだよなと思いながら見ていると、はかったようにそのとおりのことをして、結果的に窮している。
自分のことながら、困ったやつだと思う。けれども、自分が代わってやるからそこをどけ、とも言えない。どのみち私なのだ。同じ箇所でつまずき、同じ選択をして、同じように失敗するのだ。とってはいけない選択肢はわかっていても、その代わりの選択肢は見えない。同じことを繰り返すだけなのだ。
私である私が、ひとりで途方に暮れている。喉が渇いているようだと思っていると、すかさず冷蔵庫から買い置きの甘いジュースを取り出し、ひと息ついている。落ち込んだときの対処法もまったく同じだ。糖分重要だよね。
私を通して見る周囲は、私自身の目で見ていたときと変わりない。自分のお気に入りで埋め尽くした部屋。玄関の外に広がるのは、お気に入りの風景。冬の寒さのなかを散歩しながら、白い息を吐いて吸う。その冷たさもお気に入り。
なんだかんだでけっこう幸せだと思わない? 声の届かない私に向かって語りかけるが、私である私は返事をしない。
わかるよ。自分のことで手一杯だものね。
私のなかには私が溢れている。何番目の私だとか、過去の私の残滓だとか、名づけ方は何でもいい。ぎゅうぎゅう詰めで歪な形になっているたくさんの私たちが、私である私を見守っている。
私はいつもどおり適切とは言えない選択肢をとりながら、いつもどおりそのフォローに走り回っている。そして、私だった私たちと一緒に、盛大なため息をつく。