第261期 #1

俺は舌が普通の人より短い。特に不便はないし、人生の最初の17年間はそれに気づかなかった。17歳のとき、初めて彼女ができて、数ヶ月付き合ってディープキスをしてみたら、その彼女が「あなた、舌が短いかも」と言ってきた。

彼女の舌と比べてみると、確かに短かった。ネットで調べたら、何かの病気か、病気まではいかないけど少し異常なものらしい。でも生活に支障はないので、特に気にしていなかった。彼女も初恋だったので、舌が短いことを最初に発見したことを嬉しがっていた。

やがてその彼女とは別れた。その後、他の彼女もできたが、ディープキスには至らなかった。そして次の彼女ができて、同棲することになった。やっぱりディープキスのときに舌が短いことに気づかれた。その時もやはり彼女は何かを発見した気分で浮かれていた。俺はその雰囲気を壊したくなかったので、初めて知ったふりをしていた。彼女は大喜びで、舌が短いことの第一発見者として嬉しがっていた。

でもまた別れた。

そして今の彼女と付き合うことになった。だんだん親しくなってきたので、そろそろディープキスの時期かなと思っていた。彼女とキスをしてみたら、あれ、今までとは違う感じだ。相手の舌も短い。俺よりも短いかもしれない。一瞬頭が真っ白になって、「ねえ、舌が短いんじゃない?」と言ってしまった。

すると彼女は、「あら、本当?やばい、あ、本当だ。今まで気づかなかったわ。あなたとキスして初めて知ったの!」と明らかに小芝居を始めた。



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