第26期 #7

ねえ、ねぇ。聞いてる?

 彼女とはつき合ってながい。竹をわったような、それでいてグチャグチャのような気もする性格が好きだ。快諾した理由が揮っている。男の人と話すと緊張するけど、あなたは大丈夫なの。ナヨナヨ、のほほんとしてるから。お言葉通りにのほほんと、違う世界へ行ってたら、話しかけてきた。
「この前、大学の構内でね。」
「うん?」
「はなちゃんって知ってる?」
「うん。」
「彼女が走ってくるの、とことことこ…。で、躓いてバタっと倒れるの。
わたし駆け寄ったわ、"だあぁああぁ、あっ"とね。」
「"だあぁああぁ"と?」
「そうよ。いや違うのよ、"だあぁああぁ、あっ"とよ。」
「ふうん。」
どうやら、大事な用件らしい。

 とりあえず、あちらの世界は閉じて話に集中する。
「わたし言ったの。大丈夫だった?怪我しなかった?」
「立ったまま、冷たい眼で見下ろしてかい?」
「膝も抱えるくらいに座りこんで、顔をこんなに近づけたわよ。」
「顔をこうかな? 近づけて、ごつんこ。」
「いやぁん。痛ぁいじゃないのもう。ばかね。」

 彼女の平手は空を切り、返した蹴りがかわされた。息は合ってる。
「そのとき、彼女は言ったの。『あなたの走りかた面白いね』って。」
「あっははは。会話が成り立っているじゃない彼女と。」
「でしょ、でしょ、でしょう。それでね、わたし嬉しくなっちゃって。彼女の眉毛いつもこんなで、難しそうな顔してるでしょ。話すときも名前を呼ぶから、彼/彼女は使わないし…。よくできた、賢い人なんだろうって思ってた。でも、わたし彼女を誤解してたの。それからね、何て言ったと思う?」
「そのあと彼女ね、立ち上がりながら、『もうまったく、しっかりしなさい。お姉さんなんだから。』ってね。」
「あっはっはっはっ。あははっは。きっと幼い頃にお母さんから言われて、いつも心の中で繰り返してるんだね。人を寄せつけないあの感じは、しっかり、しっかりって、言ってるからなんだ。」
「なるほどね……。うん、気に入った。お友達になりたいなぁ。」
「で、しょう。わたしもそう思ったわ。」
「だ、ねえ。そうするともう、誕生日とか覚えてたりするんでしょ。」
「です。」

 ハート・マークのついた、いつもの小さなメッセージカードを取り出して見せる。
「彼女はね、今日が誕生日なの。」
「なるほど、解りました。プレゼントをお買い物ですね。それではどちらまで、お送りすればよろしいでしょうか?」
「はい、よくできました。」


Copyright © 2004 めだか / 編集: 短編