# | 題名 | 作者 | 文字数 |
---|---|---|---|
1 | 大学辞めたい | 蘇泉 | 467 |
2 | 出会いがしら | 柴野 弘志 | 990 |
3 | もう二度と行きたくない街 | euReka | 1000 |
「さて、次のメールは、ラジオネーム『もう3年生』さんからです。もう3年生さんは、結構頻繁にメール来ますね(笑)。またアレじゃない?
『僕はどうしても大学をやめたいです。』
やっぱりそうですね。大学をやめたいやめたいって、結構前からメールで言っていますね。
『昔は大人数の講義の意味が分からないですが、今はゼミの意味はマジで理解できないです。ゼミはつまらない。さっさとこのクソみたいなルーティングから脱出したいです。』
お〜い、もう3年生さん、しっかりしてよ。またかよ。
『やめたいが、なかなかやめれないです。どうすればいいですか。』
いや〜相変わらずのもう3年生さんでしたね。まあ、我々の意見は、やっぱりやめないでください、ですね。俺らのラジオが始まる7年前から、この『大学辞めたい』投稿が毎月来てますね(笑)。すごいじゃないですか。結局やめないのは、実は辞めたくないじゃないですか?ね、もうゼミも持っていますから、もう新米教員じゃないぞ。そろそろ教授にもなる年じゃない?頑張れよもう3年生先生。はい、次のメールは…」
出会い頭によく人にぶつかる男だった。
せっかちな性格で落ち着きがなく、後先を考えるより目の前の起きている出来事で頭は一杯なのであった。
仕事に遅刻するとなったら、まず家を飛び出すなりぶつかり、道路の曲がり角を走り抜けてはぶつかり、電車に乗り込もうと階段を下りたところでぶつかり、会社のエレベーターに乗り込もうとしてはぶつかった。
男は厄年を迎えると、「オマエはそそっかしくて危ないから絶対に厄払いに行った方がいい」と周りから言われた。
せっかちで面倒くさがり屋な男は、自宅の裏の空き家の、荒れ放題の庭に設置された古い社に赴き、さっさと終わらせようと考えた。
礼拝のしきたりもめちゃくちゃに男は適当な柏手を打った。
「神様。どうかこのそそっかしい性格を直してください。そしてわたしに降りかかる災いをお祓いください。お願いします」
そう言って、もう一度パンパンと手を叩き念を入れた。
当然そんなことでこの男の性格は直るはずもなかった。相変わらずせかせかして、慌てて向かった先が違う取引先であったり、改めて到着すれば本来の目的を忘れてしまうのであった。
ある朝、寝坊をして慌てて家を出ると、また出合い頭にぶつかりそうになった。思わず体をのけぞらせたが、いつものような衝撃はなく、空を切ったような感じになった。
相手はこちらを見向きもせず、何事もなかったように歩き去った。
いったい何だったのだろうか……そんなことを考えつつも、ふと急がなければいけないことを思い出した。
道路の曲がり角を走り抜けると、今度はやってきた車にぶつかりそうになる。ハッと息を呑み体を硬直させると、またしても衝撃はなかったのである。
なにかがおかしい。体に異変が起きているようだ。なんだかよく分からないが、すり抜けているようである。
電車に乗り込むときも、エレベーターに乗り込むときも、ぶつからずにすり抜けてしまう。
(そうか。神様はそそっかしさを直さず、ぶつからない体にしてくれたんだな)
男は支離滅裂な結論に納得した。そんな訳がないのに、これならぶつかる危険もなくなったと喜んでさえいる。
その喜びのままに事務所に入ると、男のデスクの周りに人だかりができていた。男が声をかけても誰も答えてくれない。その中から誰かの呟く声が聞こえた。
「バカなヤツだ。いつかこうなると思ったよ」
男の机には花が手向けられていた。
この街は、犬を連れて歩いている人がやたらと多い。
だから、路上の糞を踏まないように注意して歩かないといけない。
「今日はもう三回も糞を踏んだけど、この街には愛犬家が多いのかな」
私は誰かに愚痴が言いたくて、休憩のために入ったカフェのマスターにそう話し掛けてみた。
「ああ、あれは犬じゃなくて、護身用に従えている魔物のようなものです」
「でも私には、普通の犬のように見えましたが」
「本来の魔物の姿では恐ろしすぎるので、市の条例で、普段は犬などの小動物の姿に変身して出歩くことが決められているのですよ」
私は旅の途中に立ち寄っただけだが、護身用の魔物を誰もが持っているということは、それだけ危険な街なのか?
「いえいえ、彼らはただ自分のステータスを示すために強い魔物を持っているだけで、別に危険なんてありません。ただし、十二年に一回開催される魔物対決の日だけは、ちょっと危険かもしれませんが」
「へえ、それはいつなのですか?」
「じつは明日です。あなたは運が良い」
私は宿に帰って眠っていたのだが、早朝に、大きな爆発音で目が覚めた。
「とりあえず、地下壕へ避難して下さい」
そう宿の主に言われて、私は目をこすりながら避難した。
「今回の魔物対決は本当にやばい。最強クラスの魔物は参加しない予定だったのに、百二十年前の決着をつけるとか何とかで参加するらしい。まったく迷惑な話ですよ」
地下壕には食べ物や、飲み物や、トイレまであり、とくに困ることはなかった。
しかし、凄まじい爆発音や轟音が何十時間も続き、時間の感覚がよく分からなくなった。
「すみませんねえ。せっかく泊まっていただいたのに」
私は、轟音の中にいながら、強烈な睡魔に何度か襲われたが、五回目の眠りから覚めたとき、ようやく静寂が戻った。
地下壕から出てみると、地上にあった建物は全てなくなっており、ただ風だけが吹いていた。
「誰が勝ったのかよく分かりませんが、われわれは一からやり直すだけですよ」
宿の主はそう言うと、笑いながら涙を流していた。
「やあ旅の人。あなたも無事だったみたいですね」
数日前に会ったカフェの主人が、杖をつきながらボロボロの姿で私に挨拶をした。
「まあ、コーヒーでも一杯どうですか?」
そう言うとカフェの主人は、薪の火でお湯を沸かし、一杯のコーヒーを作ってくれた。
「いったいどうしたら、こんな馬鹿げたことを終わらせることが出来るのでしょうね」