第255期 #5

君は小悪魔

「こっちに来て」
 君は微笑みを浮かべながら駆けてきた。君がとてとてと歩くと、スカートのフリルがひらひらと揺れ、長い黒髪はさわさわと流れる。とてとて、ひらひら、さわさわ。心地良いリズムだ。気付いたら君は僕の膝の上にいて、どーするの、とでも言うように大きな目で僕の顔を覗きこんでいた。君の身体がとても小さくて、華奢なのに驚く。これで僕より年上なんて。
 君の少し吊りあがった目は、笑うと、とてもチャーミングだね。真っ黒なドレスが良く似合ってるよ。
 こんなことを言うと怒られそうだけど、この目にみんな騙されて、魂を抜かれちゃったんだろうな。
「抱きしめていいかい?」
 君はこくんと肯いて僕の膝の上に座り、僕の胸にもたれかかった。心臓がばくんと音を立てる。僕は、君を壊してしまうような気がして、どきどきしながら、そっと腕をまわした。震える僕の手と腕を、ひんやりとした君の手が、きゅっと掴んだ。
 ああ、このまま時が止まってしまえばいい。僕は目を閉じて、大きく息を吐いた。
 どれくらいそうしていただろう。
 君は、腕の中から、僕の顔を覗き込んで、低い声で言った。
「さあ、三つ目の願いはなんだ?」
 あ、今ので二つですか?



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