第247期 #3

飛文症

 朝、目が覚めたら視界に文字列が浮かんでいた。

片思い度82

 胸の上で喉を鳴らすネオの、ぴんと立った両耳の間に、ゲームのステータスみたいな文字列。なにこれ。
 んにぃ。
 一声鳴いたネオがすとんとベッドから降りると、数字はすいと消えてしまった。

「おはよう」
 母と目が合う。その母の頭上にも文字列が浮かぶ。

両思い度35

 通学路でも校内でも人や動物と目が合うと相手の頭上に文字列が浮かんで、視線が外れると消える。前々から距離が近いなと思っていた数学教師の頭上の文字列は「片思われ度」で数字は……うげ。

 放課後。部活も引退して接点もなくなったし、このまま卒業までやり過ごせればと思っていた彼に下駄箱前で声をかけられて顔を上げそうになった。うっかり目が合いそうになって慌てて胸元に視線を固定する。顔を見てしまったら。そうしたらきっと、頭の上に。それくらいならいっそ。

「あん時の先輩、可愛かったなあ」
 耳まで赤くして目も合わせてくれんで。
 文字列を突きつけられる前にと破れかぶれで告白したなんて言えない彼にはいまだにあの時のことをからかわれる。彼の膝で目を細めているネオの頭上に、文字列は今も見えている。

片思い度86



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