第240期 #4

国内および国家間の不平等を是正する

 ついに桃太郎達は鬼をやっつけた。厳しい戦いで出まくったアドレナリンで興奮した彼らは、鬼が隠していた金銀財宝を見て目を丸くした。それを四分の一ずつ山分けにしようと雉が提案した。犬はわれわれの主人である桃太郎が7、犬猿雉が1ずつが妥当だろうと言った。猿は自分はより桃太郎に遺伝的に近いため、桃太郎5、猿3、犬雉が1ずつだと言い張った。桃太郎は俺はゼロでいいよと言った。犬猿雉は耳を疑った。
 猿がすかさず「じゃあ私が6で、犬雉が2ずつで…」と言いかけたところで「君らもこれ、ほんとにいるの?」と桃太郎がかぶせた。「別に置いていってもいいかな、これ」と言った。猿は牙を剥きながらわれわれは何のために戦ったのかと反論したが、桃太郎は「じゃあ猿は何のために戦ったの?」と逆に問い返した。「お金?」と単刀直入に聞いた。猿はとっさに犬雉を見たが、彼らの目から何か読み取るのは難しく、しかし何も答えないのはだめだと考え「はい」とうわずった声で答えた。
「そうか」と桃太郎は特にがっかりした様子もなく、犬雉に「君たちは?」と問うた。犬はもとよりここまでやってこられたのは桃太郎のおかげであり、桃太郎が金銀財宝を置いていくならそれに従うと言った。雉は金には多少未練があると正直に告げた。金銀財宝は少しあてにしていて、それで派手な生活をしたいと考えていたと。ただ、今回の鬼退治で自分は成功体験を得たし、そういった生活は自分で勝ち取ると今は信じられるので、お金はいらないと言った。桃太郎は別に感心した風もなく「じゃあ、猿が10ね」と配分を決めた。猿はうきーと喜びたかったが、なんとなくそれも違う気がして、「本当にいいのですか」と桃太郎の顔を伺った。「いいっていいって。さあみんな、大八車に財宝乗せて帰ろう」と、率先して財宝を積み込み、自らそれを引いて帰った。猿は後ろから車を押しながら、いつ桃太郎達が駆け出すか見張っていたが、のんびりとしたペースで彼らは家に着いた。おじいさんおばあさんは無事に桃太郎が帰ってきたことに喜び、その後ろにある財宝に目を丸くしたが桃太郎が
「いや、これは全部猿のだから」と言うと
「そうかい」と言って、「みんなご飯食べていきなさい」と続けた。猿は「いや、私はこの財宝でもっとおいしいものを食べます」と言うと、おばあさんは「や、まあそりゃそうだけど、お腹減ってるでしょ。一緒に食べよう」と言った。猿は。



Copyright © 2022 テックスロー / 編集: 短編