第24期 #3

 俺は夢を見ている。俺は夢だと解っているが、夢の中の俺はそれを知らない。とにかく何かから必死に逃げている。だだっぴろい空間をずっと走っている。俺は嫌な予感がする。こんな何にもない空間は何かあるに決まっている。案の定俺はいきなり足を踏み外し、地面に向かって落っこちていく。もうだめだと思う。だが夢の中の俺は難無く着地するとまた走り出す。俺はすげえと思うけど、夢の中の俺は当然の事だと思っている。いつのまにか俺はどこか外国の街を走っている。交差点に差し掛かると、突然左からエージェントスミスが飛びだしてくる。俺は奴を軽くかわすと、反対方面に走り出す。後ろからエージェントスミスが追いかけてくる足音が聞こえる。俺らの距離は段々近づいてくる。耳元にはエージェントスミスの呼吸が聞こえる。奴の右手が俺の肩を掴もうとする気配を感じる。俺はその時空を飛べる事を思い出す。両手を上げて空に向かってジャンプする。すると俺の体はビューンと空高く舞い上がる。俺は空中で体勢を整え、孫悟空みたいに大空を飛ぶ。ふわりと降り立つと代官山駅前にいる。俺はまだ走り続ける。中目黒の方に行こうとすると、前方から黒服サングラスで日本刀を振り回している集団がこっちに向かってくる。キルビルかよと俺は突っ込むが、夢の中の俺は特に動揺せずに横断歩道を渡って渋谷方面に向かう。俺は誰もいない渋谷の住宅街をひたすら走り続ける。だんだん足が重くなってくる。呼吸も苦しくなってくる。夢の中の俺は疲れてきている。もちろん俺も疲れてきている。交番を曲がって、ローソンが見えてくる。ああもうすぐで渋谷駅だと俺は思う。20メートル先くらいにいかりや長介が、銃をこっちに向けて構えている。「止まらんと撃つぞ!」とか言っている。俺は心底疲れた。口の中に血の味がするほどだ。俺は両手を広げて、いかりやに向かっていく。パンという乾いた音がすると、俺の腹の辺りで熱いものが広がるような気がする。「マジかよ、ちょうさん、、。」と俺は思う。俺はそのまま前につんのめる。倒れたまま右手で腹を触ってみるが何ともない。ああ良かったと思って立ち上がると、俺は線路の上にいる。電車が向こうから全速力で走ってくる。俺は俺に叫ぶ。「あぶねえ!にげろ!」だけど夢の中の俺は電車に気がつかない。電車はどんどん俺に近づく。「おい!俺!電車がきてんだよ!にげろ!やべえ!おい!もう間に合わな


Copyright © 2004 長月夕子 / 編集: 短編