第24期 #10
目障りだった。日々を、そいつらが苦痛に変えていた。理由は、それだけだ。
路上に立ち、辺りを見回せば、いくらでも目障りな奴らが目に入る。私はそいつらをとりあえず殺した。誰かが〈無差別殺人〉などと言ったようだが、それは明らかな間違いであって、これは、言ってみれば正義だ。良い殺人だ。私は、ただ、気楽に生活したかっただけ……、なのに、あの人はどうして……私の考えを認めてくれない?
「お前は、仏さんの人生を無理やり終わらせたんだぞ。分かってんのか?」
――終わった方が良かった。
「馬鹿か! お前が仏さんの事をどう思ったのかは知らんが、憎んでいて、それで殺したならそれは間違いだ。人はな、いくらだって変われるチャンスを持ってるんだ。変われば良いと思ってるなら、それを伝えてやれば良かったんだ――」
この人は良い目をしていると思ったのに――私は泣き出しそうなのを、殺してやった奴らのことを思い出してこらえた。あれっ、何かおかしい……どうしてそんなことを考えて涙が止まる? 答えはすぐに分かった。私は、他人と久しぶりに触れ合い、あの人の罵声を浴びて後悔をし始めているのだ。
――本当はどっちが正しい?
「どっちが正しいかなんて、本当のところはわからねえ。でもな、俺はこう信じてる。人は、生きるとは何か、という問いに答えを出してから、人生が苦か、楽かを決めるべきだ。そして、人の命を他人が絶ちきっても良いのか、決めるんだ。答えは人それぞれだからな。お前も、ムショの中でよく考えろ。俺も、考えるからよ」
――……。
気に入らないのやつすぐに馬鹿にし、いじめるやつら。平気で人に迷惑をかけるやつら。子供には駄目だと言いつつ、自分も同じようなことをしている大人達。あの人に会う前はいくら考えても、あいつらは要らない人間だった。でも、やっぱり変われる……のだろうか。いや、結局それは無理だったのだ。遺族が金を要求してきて、私の人生についての答えは、出た。要らない人間は、居なくなるべきだ。