第236期 #3
「あー食パンをくわえた女の子なら見ましたよ。髪型はどうだったかな、覚えてないや。なにせ食パンをくわえていたので。」
「食パンをくわえた女の子、私見たよ。なにか急いでいたのかな、なんてったって食パンをくわえて走ってたんだもん。顔?顔は、んー食パンで隠れてたかな。」
「食パンをくわえた女の子、あの子息できてたのかしら。まぁ鼻からでも空気は吸えるのだけれども。え、服装?、服装なんか覚えてないわよ。食パンに釘付けだったんですもの。」
「食パンをくわえた女の子、おお、俺も見たぜ。背?、背は、まぁ高かったかいや低かったか。あーわかんねえ。けど、食パンは結構揺れてたよ。」
「食パンをくわえた女の子、見たわよお。すれ違った時、焼けたパンのいい匂いがしたわあ。一瞬だったけどねえ。そうねえ、特徴は、、あの綺麗な焼き目かしらあ。」
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奥さんすみません。いろいろ聞き回っては見たんですけど、
だれも、おさげで制服を着た女の子なんか見ていないそうです。
はー、そうですか。まったくあの子はどんな魔法を使って行方を眩ましたのかしら。
まぁまぁ、学校をサボるなんて学生にはよくあることですよ。
また何かありましたら、ご連絡ください。
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フフフ、これはなんの変哲もないただの食パン。朝ご飯に出された綺麗に焼けた食パンだ。
まぁちょっと冷めちゃったんだけど。
ワッハッハッハハハハハ!
称えよ、この食パンを。我らと共に。勝利に乾杯を。私は、水筒のお茶を飲み干した。
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はー、それにしても、なぜ彼らは食パンをくわえているのが女の子であると証言できたのだろう。誰も少女の特徴を言えなかったのに。不思議な話だ。
そう思い、思わず持ってたコロネをくわえてみた。
なんというか、なんというか、コロネのチョコは地面めがけてドッカンドカン。
あちゃー、もったいない。コロネから飛び出したチョコは何を思う。チョココロネの役目を果たせない哀れなチョコよ。
でもでも、おまわりさんは知らないんだ、知らないんだ。それこそもったいないない。
フフフ、フフフ、食パンをくわえるのは女の子の役目。運命の出会いは、パンが舞ってこそ始まるのよ。
さ、朝ご飯も食べたことだし、曲がり角にでも行きますか。