第229期 #5

スナック・オア・ドリンク?

不思議な女だと思った。

身長は低く、とてもではないが痩せていると言えない体つき。パッチリ二重にはほど遠い小さな目に、低い鼻と分厚い唇。お世辞にも美人とは言い難い。
友人Aはその女と付き合っていた。周りからは「あんな女のどこがいいんだ?」と日々罵声を浴びせられていたが、Aは相手にしなかった。

「あいつの良さがわからない?まぁお前らには無理かもね」

正直僕にもあの女のどこがいいのかわからなかった。別に他の連中みたいに好き勝手言いたい放題するわけではないが、そんな僕もAの考えていることはわからなかった。
百歩譲って察するに「痘痕も靨」というやつだろう。つまりAは今現在陶酔していて現実が見えていない。何かの拍子にそういう状態に陥ってしまって、数ヶ月もすれば我に返るのではないだろうかと考えていた。そう考えれば納得はいく、と。でも一体何の拍子に?

そんな疑問を抱えながら過ごしていたある日。僕とAは一緒に帰ることになった。
「Aはなんであの子と付き合いだしたの?」
「なんだ、お前もかよ」
「いや、悪く言うわけじゃないけど、不思議に思ってたんだ」
「ふ〜ん」
Aはニッと笑った。
「あいつはさ、色気があるんだよな」

僕らの家が近づくと近所のコンビニにあの女が立っていた。どうやら2人は待ち合わせをしていたようだった。
「じゃあな」
Aは僕にそう言うと彼女に駆け寄り、元々僕なんかいなかったみたいに2人の世界を作っていた。
あの女が幸せそうにニッコリ笑うのが目に入る。射止められる程ではないが、まあまあ可愛いなと思う。なんとなく納得したような気がして僕は家路に着いた。

ある日の帰り道、コンビニに寄るとあの女がいた。僕は素通りしようとしたが、
「こんにちは!この前Aと帰ってましたよね?」
捕まってしまった。
「今日は待ち合わせなの?」
僕がそう聞くと、そうではないと答えた。
「このコンビニ、私とAの中間地点なんです。私もこの辺に住んでて…」
世間話が済むと僕らは速やかに別れた。

その時だった。

背中を向けた女の首元に天女の羽衣のような透き通った虹色の光が瞬いた。優しくて温かみがあって、周りの人間を包み込むような柔らかなオーラだった。誰もがその手を伸ばして優しく抱かれたいと思うのではないだろうか。

ハッと我に返った僕は気を取り直してその場を離れた。

「強烈過ぎる…」

それから先、気づけば僕はあの女のことばかり考えるようになってしまっていた。



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